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2016-08-03 00:00
アベノミクスのカギは「労働生産性向上」
加藤 成一
元弁護士
安倍政権の経済政策「アベノミクス」は、金融政策、財政政策、成長戦略の三本の矢から成る。このうち、この4年間で、金融政策と財政政策は概ね成功し、円安、株高をもたらした。それにより、大企業及び中小企業の収益拡大、ほぼ完全雇用の有効求人倍率上昇と失業率低下、名目賃金及び最近の実質賃金の上昇、税収の大幅増大、外国人観光客倍増による貿易収支の黒字化など、20年来のデフレからの脱却を実現させた。しかるに、民進党や共産党などは、「アベノミクスは失敗した。」などと批判するが、数字に裏付けられた客観的成果の数々は否定のしようがなく、「アベノミクス」に勝る有効確実な具体的対案も持ち合わせていない。そのため、国民は、「アベノミクス」の是非を主要な争点とした過去三回の国政選挙で、野党には批判ばかりで有効確実な具体的対案がないことから、いずれも自民党を圧勝させたのである。日本国民は誠に賢明である、と言えよう。
しかし、日本経済の成長を促進するためには、成長戦略の成功が不可欠であろう。安倍政権は、地方創生や農業、医療などの分野で規制改革を進めているが、十分ではない。成長戦略成功のカギは「労働生産性向上」である。少子高齢化による労働力人口の減少を考えると、製造業、サービス産業、公務員、自営業など、これらに従事する国民一人ひとりの「労働生産性向上」が最大の成長戦略であろう。分かりやすい例を挙げれば、東京~大阪間は新幹線で3時間かかるが、リニア中央新幹線なら、僅かに1時間である。余った2時間は経済活動に充てることが可能となり、その分、国全体の労働生産性が高まり、富が増加する。このように、リニア中央新幹線など、技術革新によって交通手段や生産設備の刷新などを通して労働生産性が向上すれば、国内総生産(GDP)を押し上げる。最新の人工知能、ロボット技術、バイオ技術、医療技術、宇宙開発技術など、技術革新による労働生産性向上の余地は無限であろう。また、労働生産性の低い企業は淘汰され、労働生産性の高い産業分野や企業への労働力の移動の自由化の促進や、移動に伴う失業保険制度や所得補償制度の充実、人材育成のための職業教育や高度な職業訓練制度なども必要であろう。
国内総生産の6割を占める個人消費の低迷が問題とされるが、グローバル経済の現代は「世界は一つ」であり、海洋国家であり貿易立国でもある日本にとっては、無尽蔵ともいえる74億人の全世界の人々の需要や消費を取り込めばよい。経済活動に従事する日本国民一人ひとりの労働生産性が向上すれば、良質の商品やサービスを大量に安価に、全世界の消費者に提供することが可能になり、日本経済の成長と国際競争力の強化に資することは明らかである。
2014年のOECD加盟国34か国の比較では、日本の労働生産性は、財政破綻した19位のギリシャよりも低い21位である。ちなみに、米国4位、フランス7位、イタリア10位、ドイツ12位である(公益財団法人日本生産性本部『日本の生産性の動向』2015年版)。安倍政権は、日本経済の成長と国際競争力強化のための成長戦略としての「労働生産性向上」のために、国の立場からも一層技術革新を進め、科学技術大国を目指すと同時に、各産業分野や各企業の「労働生産性向上」のための大学教育を含む人材育成や、各種法制度や労働法制の改正、整備をはじめとして、成長戦略成功のために全力を尽すべきである。そのための未来を見据えた思い切った教育分野への投資などの財政政策や予算措置を惜しんではならないであろう。
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