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2016-08-02 00:00
小池Vs内田のデスマッチは白熱化
杉浦 正章
政治評論家
中央紙は都知事選の本質の報道を怠っているが、戦いは都議会の“黒い疑惑”を伴ってこれからも続く。ネットとテレビを味方につけた新都知事・小池百合子と都議会のドン・内田茂の戦いの構図は延長戦に持ち込まれたのだ。決着までは長期戦となりそうだが、小池が最終的には勝つだろう。小池を全面的にバックアップするのは徳洲会事件で失脚した元知事・猪瀬直樹。これは猪瀬が都知事時代から続く内田との怨念の戦いが再開することでもある。焦点はオリンピック受注工事をめぐる「疑惑」の存否だ。事が猪瀬の思惑通りに運べば、都議会自民党は「オリンピック疑獄」に巻き込まれる可能性すら内包している。小池は都議会自民党幹部に抜き身の匕首(あいくち)を突き付けながら、議会運営が出来る構図でもある。まず日程に上るのは、官邸と小池の“手打ち”だ。首相・安倍晋三は早期に増田寛也に見切りをつけて、小池への刺激を避け、これを小池も受け止めて、正面切った自民党批判の言動を避けてきた。この構図が意味するものは、下村博文ら一部議員が主張している小池への処分はまずあり得ないということだ。処分は小池に投票した都民を敵に回すことにもなり、丸損だ。安倍は夾雑物が混入する前に一刻でも早く一切を水に流して、小池と会談して、最大の国事であるオリンピックの成功に向けての態勢を確立すべきだ。次期幹事長に決まった二階俊博は、小池とは自民党が野党に転落して以来たびたび行動を共にしてきた仲であり、手打ちにはもってこいの役割を演じるだろう。
こうした“手打ち”の動きとは別に、小池が「ブラックボックス」と指摘する都議会の疑惑は、ネット先行型で展開している。猪瀬はツイッターでの指摘に加えて、ついにテレビに出演して内田の名前を公然と出して本格的な追及を開始した。8月1日の日テレでは、バレーボール会場となる「有明アリーナ」をめぐる疑惑について「内田氏は受注した東光電気工事の監査役をやっており、地方自治法92条に違反する可能性がある」と発言した。92条2項の兼職禁止に抵触するというのだ。さらに猪瀬は「今後は都議会の闇をどう暴くかだ。闇だから権力があるのであり、光を当てると闇は消える。これはじっくりと始まる戦争だと思っている。小池さんには協力する」と、まさに“宣戦布告”をした。猪瀬は今後小池別動隊として、都連幹事長である内田の追い落としに専念することになるだろう。焦点となるのは、やはり有明アリーナの競争入札だろう。東光電気工事の入札は業界紙が「逆転落札」と報じたほどの逆転劇だった。その逆転劇に政治が関与した可能性があると猪瀬は見ているのだ。
小泉純一郎が「最近は女も度胸がある」と発言したが、これももちろん都議会のドンに挑戦する小池の姿を意識したものである。小池の選挙戦術も一貫して「ブラックボックス」摘発に焦点を置いた。小池は「都連・都議会の『ドン』が都政を不透明なものにしている」と内田への攻撃を展開した。中でも圧巻であったのは、内田にいじめられ自殺したとされる元都議・樺山卓司の妻にまで応援を求め、「内田さんのひどい態度が、夫を死に追いやった」と訴えさせた。また樺山が「内田は許さない。人間性のかけらもない。来世で必ず報復します」と書いた遺書を残したことまで明らかにした。こうした抜き差しならぬ対決の構図を残して、小池が都庁という「伏魔殿」に乗り込むことになるが、猪瀬の陽動作戦と小池の都議会対策は一対のものとなる。猪瀬は今後せきを切ったかのようにテレビに登場して次々に内田と都議会自民党が抱える黒い霧を暴き始めるだろう。
一方小池は、都議会定数127人中、自民党56議席、公明党23議席という圧倒的な与党対策をまず強いられる。手始めに副議長を選任しても、与党の支持がなければ承認されない。かつて自民党会派などと対立していた青島幸男が都提出の条例案をことごとく否決されたことがあるように、対決だけでは知事職を果たせないジレンマを抱えることになる。是是非非の対応が必要となろう。小池としてはまず安倍、二階ら党本部と和解し、その影響力を都議会に及ぼすと共に、都議会にある反内田勢力と結んで内田包囲網を作るしかあるまい。一方で「利権追求チーム」を設置して、内部告発も受け入れる。元東京地検特捜部副部長で衆院議員の若狭勝の支援も受ける。この“戦争”は長引くが、世論の支持を取り付ければ弾みが付く可能性もある。一番簡単なのは、党本部が都連会長の石原伸晃と内田ら都連幹部の早期引責辞任を実現することかも知れない。
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