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2007-01-12 00:00
今年のアジアは風向き不定
河東 哲夫
Japan-World Trends代表
新年おめでとうございます。ヨットをしていると、風向きが不定になる時が一番危ないと言われています。その伝で行くと、今年のアジアは嵐ではないものの風向きがやや不安定になる時かと思っています。米国では既に次の大統領選挙が迫っていますし、中国では内政上最も重要なイベントである共産党大会があって、恐らく胡錦涛体制がほぼ完全に確立されることになるでしょう。上海の党ボスが逮捕される等、胡体制にとっての「異分子」を無力化する作業が今進められていますが、その間胡政権は足をすくわれるのを避けるため、対日関係でも慎重気味に対処してくるのではないでしょうか?今年は盧溝橋事件、南京虐殺事件から70周年です。胡政権の方から右事件をプレーアップしてくる可能性は低いと思いますが、米国では南京虐殺事件の映画を作る動きも消えていないようですから、注意が必要です。
12月には韓国で大統領選挙、台湾で立法院の選挙があります。双方とも、東アジアの情勢に大きな影響を与える大イベントです。そして北朝鮮の核開発問題も、大きなイシューとして引き続き残っています。そして、これまではASEANの発展、民主化の象徴のように僕も思っていたタイで、風向きが乱れてきています。この国では経済が発展して軍人達もおとなしくなったかと思っていたら、利権争いも含めて相変わらず内政に密接に関与していることが暴露されてしまいました。そして、国内の安定は老齢の国王によって維持されている。果たして今年、民主政治に円滑に復帰し得るか、注目しています。
そんなこんなで、「東アジア共同体」についての議論は、今年少し盛り下がるのではないかと思っています。もともとかなり将来の話で、前向きの目標として山の上に旗印がひるがえっていることが最も重要、みたいな話しだと思います。これを目標として、その基盤を着実に整備する努力を続けるのが今年、ということになるのではないでしょうか。
日本はアジアについては、いいスタートを切ります。安倍総理が日程上無理をしてまで、延期された第2回東アジア首脳会議に早期出席することは、歓迎されるべきことと思います。「アジア・ゲートウェイ構想」などの新しい対アジア・イニシャティブの実行、アジア諸国との国際金融面での協力の一層の促進、経済連携協定(EPA)、自由貿易協定(FTA)の締結、東南アジアの物流を大きく促進するハイウェーの建設支援等、今年日本がアジアでやるべきことは膨大であり、しかも言葉だけではない実のあることです。
なお、政府が憲法9条改正を提起するのであれば、これが戦後アジアの秩序を再編したいとの意図からではなく、むしろ平和と安定の維持に貢献しやすい体制を組みたいが故であることを、これからアジア諸国に説明していかなければなりません。
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