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2016-07-13 00:00
日本共産党とその「立憲主義」
加藤 成一
元弁護士
日本共産党は、昨年来より「立憲主義」を盛んに宣伝している。昨年9月に成立し、今年3月から施行された「安全保障関連法案」を「戦争法」と称し、集団的自衛権の限定的行使を容認した安倍政権による憲法解釈変更は、憲法で国家権力を縛る「立憲主義」の破壊であるから、「憲法違反」の「戦争法」は廃止し、「立憲主義」を回復すべきである、と声高に主張している。
しかし、共産党は、一方で自衛隊を「憲法違反」と主張しながら、他方で将来「自衛隊廃止」の国民的合意ができるまでは、自衛隊の存在を容認し、その間、急迫不正の主権侵害や大規模災害の場合には、「違憲の自衛隊」を活用すると言っている。このような共産党の主張によれば、「違憲の自衛隊」が事実上無期限かつ半永久的に存続することになり、これこそ、憲法で国家権力を縛る「立憲主義」に著しく違反することは明らかであろう。
のみならず、日本共産党が立脚する「マルクス・レーニン主義」(科学的社会主義)の革新は、階級闘争に基づく「プロレタリアート独裁」(共産党独裁)の樹立であるが、「プロレタリアート独裁」とは「直接に暴力に立脚し、どんな法律にも拘束されない労働者階級の権力である。」と規定される(レーニン著『プロレタリア革命と背教者カウツキー』邦訳レーニン全集第28巻249頁1958年大月書店刊)。そのように規定される「プロレタリアート独裁」が憲法で国家権力を縛る「立憲主義」や、法の支配を認める「法治主義」と根本的に矛盾することは自明であろう。
従って、共産党が、「マルクス・レーニン主義」の核心である「プロレタリアート独裁」の概念を放棄しない以上は、将来、共産党が政権を奪取した場合に、憲法で国家権力を縛る「立憲主義」や、法の支配を認める「法治主義」を、果たして順守するのかどうかについて、重大な疑念がある。もともと、「マルクス主義憲法学」によれば、ブルジョア憲法である日本国憲法は、「ブルジョア独裁」による階級支配の道具に過ぎないから、いかなる権力でも憲法に縛られるという、ブルジョア思想に基づく「立憲主義」の発想自体が、存在しないのである。共産党による「立憲主義」の主張は、その本質を冷静に見極める必要があると言えよう。
ところで、7月10日に実施された参議院選挙により、自民党と公明党の与党は、改選議席の過半数61議席を大きく超える70議席を獲得し勝利した。共産党と民進党による「立憲主義破壊」「安保法制廃止」「安倍政権打倒」の主張は、国民の多数からは支持されず、否定された、と言うべきであろう。この観点からの根源的な議論がなされていないことを問題であると思う。
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