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2016-07-06 00:00
「辺野古移設問題」の解決案
加藤 成一
元弁護士
沖縄普天間米軍基地の辺野古への移設問題は、政府と沖縄県が今も非妥協的な関係にあり、全く進展していない。このことは、日本の領海や接続水域への中国軍艦の侵入や、核実験やミサイル発射を繰り返す北朝鮮の脅威を考えると、日本の安全保障にとって由々しき問題であろう。
この問題の根本は、沖縄米軍基地の「抑止力」が尖閣諸島を含む沖縄及び日本の安全保障にとって必要不可欠であるかどうかの判断である。意外なことに「日米ガイドライン」や「戦争法」に反対の立場の左派系学者の中にも「沖縄に駐留する米軍(とくに嘉手納基地)の存在は、それだけで南西諸島領域における軍事紛争に対して、絶大な『抑止力』としての意味を持っている」(小沢隆一東京慈恵会医科大学教授著『平和主義、立憲主義、民主主義を侵害する日米ガイドラインと戦争法』日本科学者会議編「日本の科学者」2016年4月号28頁)と指摘する有力な学者がおられる。
かつて、フィリピンから米軍基地が撤去されたのちに、フィリピンが実効支配していた南沙諸島を、中国が軍事力を背景として領有した事実を指摘するまでもなく、沖縄からの米軍基地の全面撤去は、尖閣諸島を含む南西諸島領域の保全にとって、極めて危険な行為となるであろう。なぜなら、憲法9条の制約や国民世論からしても、沖縄米軍基地の「抑止力」に代わって、日本が独自に攻撃型兵器等を含む「多角的抑止力」を獲得し保有することは、著しく困難だからである。そうだとすれば、結論はおのずから明らかであろう。それは、沖縄における米軍基地の整理縮小や基地機能の合理化、効率化などは、今後も一層推進すべきであるが、沖縄米軍基地の全面撤去は、沖縄及び日本の安全保障上相当ではない、ということである。
従って、「沖縄辺野古移設問題」の新たな解決案としては、(1)移設される「辺野古基地」について、東アジアの安全保障環境を見据えたうえで、合理的かつ適切な米軍の使用期限を設定し、使用期限後は「辺野古基地」を日本側に全面返還する取り決めを、日米間であらかじめしておくこと、および(2)移設される「辺野古基地」について、米軍と自衛隊との全部または一部の共同使用を認める取り決めを、日米間であらかじめしておくことが考えられる。上記(1)と(2)の解決案ならば、政府と沖縄県との間でも解決の糸口が見いだされる可能性があるのではないか。いずれにせよ、沖縄を含む日本の安全保障のために、政府は、沖縄県に対して、「辺野古移設問題」の早期解決に向けた、夢のある「具体的な将来ビジョン」と「工程表」を提示し、沖縄県も、尖閣諸島の保全の必要性を理解し、政府と沖縄県の双方が知恵を出し合い、協議を重ねて、これ以上の不毛な対立は一日も早く終結し、「辺野古移設問題」の早期解決をはかるべきであろう。
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