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2016-07-01 00:00
シリアにおけるロシアの思惑とイランの不信感
川上 高司
拓殖大学教授
6月9日、ロシアの国防相、シリアの国防相がイランを訪れ、イランの国防相との3者会議を開いた。この会議はイランの提案で設けられ、ロシアの国防相はイランとシリアの最近のロシアへの不信感を払拭しなければならなかった。イランのロシアへの不信感は募るばかりである。ロシアは大局的な見地からかアメリカと一時停戦の合意をし、シリア自由軍への空爆を中断している。
そして、政治的な解決のプロセスをアメリカとともに進めている。この一時停戦はイランには全く知らされておらず、イランからすれば「いったいどっちの味方なのだ」とロシアの目的に疑心暗鬼になるのも当然だろう。5月9日のアレッポの郊外にあるカーン・ツマンという小さな村で、イラン革命隊の特殊部隊が大損害を被った。もしロシアが空爆を実施していたらこのような損害はでなかったであろう、との思いがあるだけに その不信感は頂点に達している。
ロシアのシリア介入の目的は、アサド現政権の維持であることははっきりしている。イランの目的は、レバノンのヒズボラ、イラクやシリアへの軍事支援、武器の補給である。そのためにイランも莫大な予算をつぎ込んでいる。2011年以降イランがシリア支援に費やしたのは90億から150億ドルと言われている。この額は欧米の経済制裁を受けていたイランにとって、決して安くはない。
高まるイランの不信感を察知してロシアも5月9日の戦死者には哀悼の意を表し、イランに何も知らせなかったことを謝罪した。もちろんそれだけでイランの不信感は消えるものではない。だが、ロシアの協力なしにシリアで軍事的な勝利を収めることはイランにとっては不可能に近い。それゆえにイランもロシアと決裂することもできないでいる。ロシアの、アメリカとイランを天秤にかけるようなバランス外交が失速したときシリアの安定はさらに遠のく。
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