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2007-01-10 00:00
中国の2006年外交の総括と東アジア共同体論
舛島 貞
大学助教授
中国の李肇星外相が、中国共産党の機関紙『求是』(2007年1月1日号)に「2006年国際形成和中国外交工作(2006年の国際情勢と中国外交)」という文章を発表した。中国外交部は『外交白書』を公刊しているが、この李外相の一文が2006年の中国外交の総括的性格を有していると見ていいだろう。その一文を見ていこう。
2006年12月のセブ島での会議が中止になったこともあろうが、東アジア共同体それ自体への言及はない。だが、アセアンとの関係をきわめて重視する表現が多々見られた。中国は、今後もいわゆる「東アジア共同体」をアセアンとの関係の延長上に考えているのであろう。他方、日本ではとかく「東アジア共同体と日米関係」という二分法で考えられがちだが、中国にとってのアセアンや東アジア共同体構想は、数多くある地域間構想のひとつに過ぎない。この点、李外相はアセアンとの関係をロシア、中央アジアとの協力関係を示す上海協力機構の5周年記念やアフリカとの協力関係(2006年は「アフリカ年」とされていた)とあわせて並列させていた。
李外相はその3者を3大サミットとしている。そして、その3者における外交を、周辺諸国、発展途上諸国との協力を深化させるという目標の下に位置づけたのである。アセアンとの関係を見れば、2006年は中国・アセアン間の対話関係が成立してからの15周年にあたった。両者の関係は、平和と繁栄における戦略的パートナーシップとされるが、同時に周辺との善隣外交との重点対象とされていた。
日本では麻生太郎外相が昨年に「自由と繁栄の弧」という概念を提起し、「価値の外交」を提唱している。だが、中国側は日本が問題としているような人権問題、おそらくは民主主義をめぐる問題も、文明、文化間の差異と位置づける。中国は文明交流、文化交流を促進することで、そうした差異を克服していくことを強調しているが、人権問題などはそれでも解決が困難なものとして挙げられている。文明、文化的差異を強調する方向は、民主主義や人権などにまつわる普遍価値を受け入れるか否かという選択肢ではなくて、それは文明、文化的差異だという相対主義に基づいて議論だけするということを暗示しているように思える。価値が相対化されて、克服すべき差異といった言葉の中に回収されてしまえば、日本の外交は「暖簾に腕押し」になってしまうだろう。日本の「普遍」が特定文明、文化の価値と位置づけられるのではなく、共有規範として機能させていくための手段が必要となろう。
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