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2016-06-24 00:00
大統領選挙に陰を落とす銃乱射事件
川上 高司
拓殖大学教授
6月12日、アメリカのフロリダ州オーランドで起こった銃乱射事件は49人の犠牲者を出し、史上最悪の事件となった。多数の犠牲者がでる銃乱射事件はたびたび発生しておりそのたびにオバマ大統領は「何度同じことを言ってきたことか。銃規制を強化するべきだと」と悲痛なスピーチをしてきた。今回は容疑者のオマル・マティーンがイスラム教徒であること、標的がゲイクラブであったことから、イスラムテロなのか同性愛者をターゲットとした憎悪犯罪なのかという複雑な事件となった。
イスラムテロなら、国家安全保障問題であり外交政策に影響を与える深刻な事態となる。憎悪犯罪であれば国内政治の問題となり、性的少数者や銃規制というアメリカ社会を分断するような深刻な問題となる。マティーンは、1986年ニューヨーク生まれの29歳だった。両親はアフガニスタンからの移民であり、父親はアフガニスタンの大統領選挙に立候補するほど政治に関心が強い。タリバンやタリバンを支援するパキスタンを嫌っており、イスラム原理主義というよりはリベラル派である。
その息子であるマティーンは、宗教に関心が薄く、モスクにも「最後に来て最初に帰る」タイプだった。FBIから捜査対象となったこともあったが、脅威とは見なされず監視対象にもならなかった。民間警備会社に勤めるごく普通の若者だったようだ。ただ、同性愛を激しく嫌っていたと同僚や両親は証言した。そうであれば今回の乱射の動機は憎悪だとみることもできるが、容疑者が射殺されているので断言はできない。
今回の事件は、大統領選挙にも影響を与えている。共和党候補のトランプは「自分の主張が正しいと立証された」と息巻く。彼は「イスラム教徒の移民は制限するべきだ」と、公言して憚らない。もっともマティーンは、アメリカ国籍のイスラム教徒であり移民ではない。クリントンは「テロ」と言いつつもイスラム教との関係への言及は避けている。そして銃規制の強化も主張している。オバマ大統領も「テロであり憎悪だ」としてあくまで国内問題にとどめるつもりのようだ。世界もアメリカがこの事件にどう向き合うのか、注目している。
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