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2016-06-20 00:00
アメリカはシリア民主軍をコントロールできるか
川上 高司
拓殖大学教授
シリア民主軍(Syrian Democratic Forces:SDF)は、アメリカが創設したクルド人とアラブ人が中心の新たな反政府軍である。米軍とフランス特殊部隊が訓練し、戦闘をサポートしている。そのSDFは地元の武装集団と連携してISISと闘うので、地元の住民からは「救世主」と歓迎を受けることが多い。彼らが次のISISの支配から奪還を目指しているのは、シリアとトルコの国境近くの街であるマンビジュである。
これまでの戦闘では、SDFは米軍の空爆のサポートを受けているので、ISISに対して優位に立ち、ISISは劣勢に立たされている。そのためかSDFは「向かう者敵なし」と鼻息が荒い。だが米軍関係者は「ISISの反撃も強く奪還は簡単ではない」と危機感を持っている。問題はマンビジュ後である。SDFのクルド人たちはさらに北のコバニなどトルコ国境のクルド人の支配地へと進むことを考えている。
だが、SDFのアラブ人たちはマンビジュから南へ向かいISISの中心地であるラッカ奪還を狙っている。この方針の違いは、ともするとSDFの分裂を招きかねないし、コバニへ向かうことはトルコを刺激することになる。SDFをアメリカが支援することに対してトルコは難色を示してきた。ISISを駆逐するのはいいがそこに発生した力の真空にクルド人勢力が入り込みクルド人が力を拡大することは、トルコにとっては最悪の事態である。
トルコがアメリカへの協力に消極的で、シリアの政治的解決にも非協力的である理由はここにある。アメリカはSDFにもっとアラブ人を増やしてクルドの影響力を弱めるとトルコに約束しているが、親米であるクルド人の存在は対ISISにおいては大きい。ISISとの戦闘で主力を務めるSDFをめぐってアメリカは難しい立場に徐々に追い詰められている。アメリカがSDFをコントロールできるかどうかに、シリア内戦の行く末がかかっている。
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