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2016-06-10 00:00
中国、ロシア艦船に“便乗”の姑息(こそく)
杉浦 正章
政治評論家
南シナ海から琉球諸島を抜け、対馬海峡を経てウラジオストクに向かうロシア艦隊のルートは、日本海軍に殲(せん)滅させられたバルチック艦隊の昔から同じだ。インドネシア沖での対テロ軍事演習を終えてロシア艦船が帰還するルートを中国が予測するのは容易であっただろう。そして、あたかも“中露結託”のように見せかけて接続水域への侵入を図ろうと手ぐすねを引いたのだ。練りに練った歴史に残る茶番劇だが、それを筆者に看破されるようでは、中国海軍もたいしたことはない。政府が6月8日深夜から9日未明にかけて、中国フリゲート艦とロシア艦艇の動きを別物であり、シンクロナイズしていない、と短時間の間に判断したのは正しかった。中国の狙いの第一は、日本の即応能力の掌握にあり、防衛省の連絡を外務省が受け、官邸が首相・安倍晋三以下冷静沈着に陣頭指揮に当たったのは、尖閣漁船衝突事件で慌てふためいて、国益を大きく棄損した民主党政権と比較して格段の差がある。とりわけ安倍の「不測の事態に備えよ」発言が注目される。これは、領海内に入れば自衛隊に海上警備行動を発令するとの意思表示であり、軍事行動も辞さぬ政府の決意の強さと隙の無さを垣間見せた。参院選を前に願ってもない好材料の発生だ。
政府のすべての動きを象徴するのは、9日午前2時に外務次官・斎木昭隆が中国大使の程永華を呼びつけ、「勝手な振る舞いは許さない。今後このようなことが起これば、必要な行動を取る」と厳重警告したことだ。この「午前2時の警告」は、日本外交史に残るものであろう。「私が深夜に呼ぶのは初めてだ。それだけ事態は深刻だ」と述べる斎木の気迫に押されるように、大使が「エスカレートを望んでいない」と述べたのも当然のことであろう。大使が中国が東南アジア諸国に対して行っている“いじめ”が日本には通用しないことが分かった瞬間である。中国が“挑発レベル”を急速に高めた背景には、日米主導の中国孤立化の動きへの反発が第一に挙げられる。伊勢志摩サミットでは「東シナ海および南シナ海における状況を懸念し、紛争の平和的管理および解決の根本的な重要性を強調する」とする“中国非難宣言” が発せられたのも痛手であった。シャングリラ会議や、これに続く米中戦略・経済対話でもスカボロー礁をめぐって中国批判が集中し、習近平の海洋進出膨張路線は、とん挫しかねない状況に追い込まれている。米空母艦隊は南シナ海で中国海軍をけん制し、日本も最新鋭の護衛艦や潜水艦を送り込んでいる。習近平はひしひしと対中包囲網による孤立化を感ぜざるを得ない状況となっているのだ。
こうした状況のままでは、習への求心力は弱体化せざるを得ず、ただでさえパナマ文書をめぐる「習近平の疑惑」がボディブローとして利きつつある。報道を抑えても、幹部の間では口コミで伝わり、権力闘争に影響するのだ。加えて、中国経済の不振は目を覆わんばかりである。内政・外交ともに厳しい状況に置かれているのが実体だ。こうした窮地を脱するために歴代中国政権が行ってきたことは、国民の目を外に向けることだ。東シナ海上空で米軍偵察機に戦闘機で急接近をし、今度は時々接続水域に入るロシア艦船の動きと習性を察知した侵入へと到るのだ。しかし今回の場合は、ロシアとの連携がさも成立しているかのような印象を与える姑息(こそく)そのものの動きであり、余りに幼稚であきれ返る。ロシア大使館も「ロシア海軍の駆逐艦が尖閣諸島接続水域に入ったことに関して誤解があり、コメントする。当海域では中国と関係ない。ロシア海軍は定例の演習の帰途であり日本の領海に入ることも当然ない」と説明しているが、その通りだろう。すぐにばれてはどうしようもない。
ただ、習近平が一番誤解しているのは、中国海軍のそれと比較した場合の海上自衛隊の戦闘能力だ。英国BBCは元自衛隊士官の山内敏秀による興味深い分析を最近報道している。これによると「中国海軍は数で勝っているものの、戦艦は博物館入りするようなものばかりで、052型ミサイル駆逐艦はまずまずだが、日本などの先進的な艦艇とまともに戦えるのは、この1種類だけだ」と述べたという。確かに海上自衛隊の戦力は中国をはるかに上回るという専門家は多い。世界最強の米海軍将校が、海自と共同演習をした結果、「操船技術、航海技術などの練度といい、シーマンシップなどの礼節といい、素晴らしい。世界有数の海軍だ」と感嘆の声を上げているという。そもそも日本が中国海軍に敗れたのは、663年の白村江の戦いだけであり、その後は元寇も追い返し、日清戦争での黄海海戦も圧勝している。習近平は中国がしょっちゅう脅しをかけているフィリピンやベトナムなどとは、格段の差があることを銘記して、日本に手を出せば大やけどすることを知るべきだ。それにつけても沖縄県知事・翁長雄志は、自分の県内の出来事なのに寂として声なしなのはいかがなものか。中国のやることはすべて黙認するのか。中国が沖縄を占領すれば中国国旗を振って歓迎するのか。いずれにせよ、参院選挙を前にして、またまた中国が与党に大きなプレゼントをしてくれた形となった。
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