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2016-06-03 00:00
ますます内向きにになるアメリカ
川上 高司
拓殖大学教授
オバマ大統領が「世界の警察官から降りる」と宣言して、その言葉通り孤立主義を貫く外交政策を展開してきた。いよいよ任期が迫り、大統領選挙が盛り上がってきているが次期大統領がアメリカの立ち位置をどう考えているのかは気になるところだ。そのオバマの外交政策に近いのが、意外にも共和党候補のトランプである。彼はアメリカだけが負担を背負う必要はないとやはり世界の警察官を否定しているのである。
世論も、世界には係わるべきではないと考えている。ピューリサーチセンターの5月の世論調査によれば、国民の57%が「アメリカはアメリカのことだけを考えていればよい」と答えている。「他国の問題に関与すべき」と考えているのは37%にすぎない。それは経済分野でもあてはまる。「アメリカが世界経済に関与しすぎだ」と答えたのは41%、「ほどほどでよい」と答えたのは28%、「関与が足りない」と答えたのは27%に過ぎない。「世界経済に関与することを支持する」としたのは44%、逆に「支持しない」と答えた国民は49%と、経済面でも国民は内向きになっている。
そして次期大統領は「国内政治を最優先すべき」と考えている国民は70%、「外交に力を入れるべき」と考えている国民は17%にすぎない。アメリカ社会全体が内向きで孤立主義化しているのである。ここにトランプ人気がある。トランプは国民のこのような傾向を読み、アメリカ最優先の極端な政策を掲げて人気を博してきている。民主党でもサンダース旋風に象徴されるようにアメリカ国民は遠いシリアの問題よりも自分の生活する場所のことを考える政治を望んでいる。言い換えれば理想より現実優先なのである。
かつてヨーロッパから新大陸へ移民を率いて渡ったウインスロップは、アメリカは「丘の上の街」であると説いた。丘の上にある街は誰もが見ることができる。衆人の目に常に晒されている街は人々の「理想の街」を目指さなければならない。つまり新大陸のアメリカは、世界の「理想の国」とならなければならない。それがアメリカに課せられた使命である。以来アメリカは世界の「理想の国」となる使命を背負ってきた。だが、世界は大きく変わった。アメリカも変わった。もはやアメリカが「丘の上の街」である必要はない、普通の人々でいいのだとアメリカ国民は考え始めている。今年の大統領選挙は、アメリカの理想をこの先も背負うのか放棄して普通の国になるのかを問う重大なターニングポイントとなる。
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