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2016-04-20 00:00
オスプレイは熊本地震にどんどん活用せよ
杉浦 正章
政治評論家
半世紀以上報道に携わっているが、熊本大震災に際して朝日、毎日両紙と民進、共産両党が展開しているオスプレイ反対論ほど異質なものを知らない。異質というのは、10万人が避難生活を送り、一刻も早い支援を待っている今この時に、救出の“手段”にまで反米のイデオロギーを持ち出すのかということだ。同じ日本人かと思う異質さだ。まるで「救急車が危険だから大八車を使え」という議論だ。これこそ国民の生命の危機を政治利用していることになる。政府・与党は堂々と反論すべきであり、米軍の“オスプレイ支援”を躊躇(ちゅうちょ)なく受け入れ、継続させるべきだ。まず朝日は4月19日の朝刊で「被災地にオスプレイ」の見出しに「必要性疑問の声」「政治的な効果」という中見出しで疑問を提起した。共産党の書記局長・小池晃をけしかけて、「オスプレイに対する国民の恐怖感をなくすために慣れてもらおうということで、こういう機会を利用しているとすれば、けしからんことだ」と語らせている。一方毎日も同日の紙面で「熊本地震、オスプレイ物資搬送『政治利用』の声も」との見出しで「オスプレイの風圧で2015年のネパール大地震で住宅の屋根が破損したとの報道もあった」などと批判的記事を展開している。
さらに朝日は、民進党常任幹事会議長・原口一博の「オスプレイはハワイの事故で、砂を吸い込んで落ちている。防衛省の資料を見ると、我が国の航空機がヘリコプターを含めたくさん活躍している。わざわざオスプレイをもってきて、避難している皆さんも非常に不安に思われている。砂を吸い込んで落ちるものが、噴煙に対して大丈夫なのだろうか」という談話を掲載。一方共産党の畠山和也は国会で、「懸念されるのはオスプレイを活用されること。廃棄熱での火災や民家の屋根が吹き飛んだとの報告もある。二次災害の危険性はないのか」と反対論を展開している。まずいのは、これがデマゴーグとして日本中に流布されていることだ。
これら左傾化メディアと左翼政党の反対論は戦後の反米イデオロギーに根ざしたものであり、オスプレイの米軍導入に対する反対闘争をこともあろうに大震災の粉じんが収まらない中でぶり返そうとしている姿勢がありありと見える。第一に、原口の言うように被災者からオスプレイに懸念の声が本当にあがっているのか疑わしい。朝日と毎日の記者は恐らく防衛省詰めの社会部記者だろうが、あきれるのは防衛省側が反対論調を助長するような“ミスリード”をしていることだ。その証拠を挙げれば、朝日によれば、防衛省関係者が「米軍オスプレイの支援は必ずしも必要ではないが、政治的な効果が期待できるからだ」と述べたという。毎日も「省内でオスプレイを政治的に見せつける作戦との冷ややかな見方も出ている」と報じている。あ然とするような防衛省の広報ぶりであり、両社記者に“おもねる”防衛官僚の姿を露呈している。「防衛省は大丈夫か」と言いたい。
こうした論調が間違いなのは、オスプレーの実績から見れば明白だ。まず2013年11月に超大型台風がフィリピンを襲った際も、米軍が普天間基地からオスプレイを派遣、大活躍した。救出した被災者は2万人近くにも及ぶという。共産党が取り上げたのは2015年のネパール大地震で住宅の屋根が破損したことだろうが、一体どんな屋根か。もともと地震で破損しているブリキ屋根ではないのか。小さな事を主張して大きな方向を見誤ることを「木を見て森を見ない」と言うが、まさに左翼の論調はそれだ。オスプレイは時速500キロと普通のヘリの2倍以上のスピードがあり、航続距離は3900キロだ。朝日は「ほかにヘリコプターがある」と指摘しているが、災害救済能力には格段の差がある。東日本大震災に投入されたヘリは空自のCH-47、陸自のUH-60、海自のSH-60などで人命救助に大活躍したが、惜しいのは燃料切れが早く、涙をのんで基地に引き返さざるを得なかったケースが多く出た。
オスプレイは空中給油も可能で、全国何処にでも急派できる。長時間に渡る救援活動が可能であり、東日本大震災の前に運用が始まっていれば、多くの人命が救えたことは間違いない。専門家も「被災地上空を飛び回るマスコミのヘリより安全だと」指摘している。朝日、毎日が、政府によるオスプレイの「政治利用」を指摘しているが、防衛省のミスリードはともかくとして、事の本質はオスプレイ反対の編集方針にある。編集方針は勝手であり、報道は自由だ。愛読する読者がいるから書くだけだが、両社にはこういった記事を書く記者が良い記者であるという独特の雰囲気があるに違いない。結果的に見れば、「災害の政治利用」をしているのは両社と左翼政党であり、大災害時においても人命よりイデオロギーを先行させる姿勢にはあきれ返るとしか言いようがない。関東大震災や南海地震への備えもあって政府はオスプレイを18年度に17機調達するが、もっと数を増やして大都市周辺に展開させておくべきだ。
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