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2016-04-16 00:00
「日本の財政は最悪」というデマ
田村 秀男
ジャーナリスト
日銀による異次元緩和政策は、まる3年経ったが、無力だという批判が多い。筆者はこれに対して、効力をつぶしているのは消費税増税・財政支出削減であり、政府が緊縮財政政策を止めると金融緩和の威力がよみがえると主張している。安倍晋三首相周辺は、来年4月に予定されている消費税率の10%の引き上げ凍結と大型補正予算編成の検討を急いでいる。増税と緊縮財政路線にしがみつく財務省、同省ご用達の学者と日経新聞、朝日新聞などのメディアはこれに対して、今回ばかりはなぜか声が小さい。日経に至っては、社説で「増税延期の是非慎重に判断を」(3月19日付朝刊)と弱々しい。代わりに、日経の子会社となった英フィナンシャル・タイムズ紙が31日付の社説で「安倍首相は消費増税を見送るべきだ」とずばり正論を展開した。子のほうが親より正しいことはよくあるが、その場合は潔く子に従うのが常識というものだ。
「日本の財政は先進国では最悪で、国民1人当たり830万円の借金を背負っている」と日経などが書き続ける。デマもいい加減にせいと、拙論はこれが詐欺論法であることを7、8年前から指摘している。国は国債発行などで大半を日本国民から借りているのだから、国民は直接、間接に830万円の金融資産を持っているわけだ。相手は有権者でもある債権者が監視する自国政府なのだから、まことに安心できる優良資産である。党の指令一つで借金を踏み倒しかねないどこかの国とは大違いだ。最近は拙論の国債=国民資産論に同調する論者が増えているのだが、いまだに財務官僚も御用メディアも虚偽情報を流し続けている。嘘つきは恐ろしい。
さて、最近公表された日米の政府財務の貸借対照表(日本は2015年3月末まで、米国は15年9月末までの年度)を見る。日本の政府債務は総額で見れば、確かに国内総生産(GDP)の2倍を超すが、日本特有の事情がある。戦中、戦後を通じて、日本はよくも悪くも経済活動における政府の役割が大きい。一般会計・特別会計予算を合わせるとGDPの約5割を占める。いわば「大きな政府」なのだから、負債が多ければ資産が多いのは当たり前だ。問題は負債がどの程度まで資産を上回っているかという純負債である。GDP比ではちょうど米国と同一水準である。日本が債務危機にあると騒ぐ向きは米国に対してもそう批判すべきだろう。
日本ではもう一つ、「国の連結財務」も公表されている。それは政府と政府系機関である独立行政法人を併せた貸借対照表で、その純負債のGDP比率は90%と、グンと軽くなる。要するに官僚は優良資産を独立行政法人に移して、心地よい天下り先を確保しているわけだ。財務省もこれ以上、債務が大変だと騒ぐなら、資産を処分して債務を減らせばよい。そうすると天下り先がなくなるので、まずいというわけだ。
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