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2016-03-24 00:00
小沢・共産の「野合路線」が早くも空回り
杉浦 正章
政治評論家
まるで関ヶ原決戦を前にした西軍の分裂のような状態を野党が呈し始めた。生活の党代表の小沢一郎は共産党委員長・志位和夫との対談で「共産党とは組めないとか、小沢は嫌いだと言っているようでは、安倍さんになめられる。その他の野党の器量の問題だ」と発言、民主党代表・岡田克也を暗に“器量”が無いと批判した。確かに岡田は西軍の将・石田三成のように狭量なところがあり、野党全軍の”将”の器となれるか疑問だ。一方東軍の将・安倍晋三は選挙を「自公対民共の戦い」とクリアカットに位置づけ、「決して負けるわけにはいかない」と旗幟を鮮明にさせた。加えて注目すべきは、政府が3月22日共産党を「現在においても破壊活動防止法に基づく調査対象団体である」「共産党の『いわゆる敵の出方論』に立った『暴力革命の方針』に変更はない」と改めて指摘する答弁書を閣議決定したことである。あきらかに共産党に接近する民主党に打撃となるうえに、分断を狙った決定である。若い人は知らないだろうが、共産党が1950年にスターリンの指示と資金を受けて事実上武装蜂起して火焔瓶闘争を展開したのは有名である。これを再びむしかえし、指摘したのだから、誰が見ても東軍の戦略の方が「家康風」で狡猾である。西軍は小沢がやきもきするように安保関連法や消費増税といった重要政策で分裂の傾向を呈している。とりわけ小沢の「消費税延期先取り戦略」は、狡(こす)っ辛さここに極まれりであるのみならず、野党内に亀裂を生みかねない側面がある。
昨年夏の安保法制審議などをきっかけに小沢・志位会談は水面下でこれまでたびたび行われているが、雑誌の対談はその内容が分かる意味で貴重だ。この中で小沢は志位の参院選改選1人区で候補を取り下げるなど野党共闘を推進する姿勢を「日本の歴史を変えるきっかけになる」と褒めちぎった。まさに“一大よいしょ”を展開したのだ。何としてでも共産党の集票力を確保して、政権交代の夢よもう一度と言う策略であり、目的のためには「悪魔」とでも組むという、なりふり構わぬ野合路線の露呈だ。政局見通しについても「多分ダブル選挙になる」との見通しを述べ、志位も同調した。そして争点を「国民の多数が反対している」(志位)安保法破棄に絞ることでも一致した。この場で目立ったのは小沢が、安倍の検討している消費増税再延期について「安倍政権より先に延期を打ち出すべきだ」と“延期先取り”を主張したことだ。大衆受けする政策ならなりふり構わず、生き馬の目を抜くがごとくに先手を打とうとする「小沢ポピュリズム」の面目躍如たるところが見える。
3月27日に結党大会を開く民進党は他の弱小政党にも働きかけて、合併を促す方針だが、小沢に対してはどうも入党を拒否する流れが強まっている。小沢アレルギーが依然として根強く、岡田が党内をまとめられないからだ。前首相・野田佳彦に到っては、去る3日の連合の春闘決起大会で「方針が決まってもゴチャゴチャ言うのが民主党の悪いクセだ。一番ゴチャゴチャ言ったのは元代表だ」と名前こそ出さなかったが小沢批判を展開。それでも言いたりないのか野党糾合問題について「一番(私の)足を引っ張った(小沢)元代表さえ来なければ、あとは全部のみ込もうと思っている」とまで述べた。露骨なまでの小沢外しだ。さらに党内では右派を中心に共産党アレルギーも根強く、元外相・前原誠司は共闘について「あり得ない。逃げる票の方が多い」と全面否定。京都選挙区で共産党と戦ってきた前原は「共産党の本質はシロアリ」とテレビで発言、侵入を放置すれば屋台骨ががたがたになることを強調した。小沢・共産の野合路線がまさに空回りの図である。
いまや共産党賛美の小沢は、こうした民主党内の空気にしびれを切らしたと見えて、23日夜には何と民主党抜きで野党4党党首の会合を主催した。この場で小沢は志位との対談で持ち出した消費増税凍結法案の今国会提出を提案、会合は民主党に持ちかけることで一致した。既にこの小沢の凍結案は民主党に吸収される維新の党でも代表・松野頼久が党内で、野党共同で国会提出する方針を表明している。しかし民主党内は安倍の検討している消費増税延期の方針について、政調会長・細野豪志らが既に「財政規律を重視する立場を打ち出し、延期を批判した方が戦いは有利」とする立場から「先延ばしするのであれば、安倍政権そのものが退陣するのが筋ではないか」と反対論を展開している。幹事長・枝野幸男も慎重論であり、松野が復党して主張しても受け入れられる雰囲気にはない。早くも合流を前にして政策のずれが表面化する兆しを示している。
また安保法破棄を旗印とする路線が国民の共感を呼ぶかどうかも疑問だ。なぜなら安保法の正しさは北朝鮮の何をするか分からないトップの動向が日々立証しているからだ。狂ったようにミサイルを撃ち続ける姿を目の辺りにして国民は安保法がなかった場合の日本の姿に思いをいたさざるを得ないだろう。簡単に言えば、米国に向かうミサイルを無視したら、日本に向かうミサイルを米国が打ち落とさない可能性があったのだ。この緊迫した極東情勢下で、共産、民主に扇動された“安保天降り病”患者がまだ日本にいる方が奇跡だ。政局の焦点である消費税延期をめぐる思惑の相違も、野党の選挙共闘の柱となる政策が成り立たなくなる恐れがある。加えてダブル選挙となった場合、野党は数々の選挙区で衆参のまた裂き状態に置かれることになる。一方で協力し、一方で反目する混乱だ。政策で混乱した揚げ句のまた裂きでは、野党統一の選挙戦略そのものが根本的な打撃を受けかねない状態でもある。
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