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2016-03-18 00:00
(連載1)金融自由化が中国軍拡を止める
田村 秀男
ジャーナリスト
北京では毎年恒例の全国人民代表大会(全人代、共産党が仕切る国会)が3月5日から開催された。会議の前日、2016年度の国防費が前年度実績比7~8%増になる見通しが発表された。依然として国内総生産(GDP)の成長率を上回る高水準だ。日米が反発しても、習近平政権はどこ吹く風だ。が、通貨・金融面から見れば、軍拡にブレーキをかけることはできることを論証しよう。
軍事とはしょせんカネがものを言う。筆者のみるところ、中国の軍事費膨張を可能にしているのは、中国の通貨制度である。中央銀行が供給する資金は「マネタリーベース」と呼ばれるが、党が支配する中国人民銀行が外部から流入するドルなど外貨を商業銀行から買い上げ、マネタリーベースをその分増やすというのが、基本的な中国のマネー創出システムである。08年9月のリーマン・ショック後、米連邦準備制度理事会(FRB)は3度にわたる量的緩和(QE)に踏み切り、14年10月のQE終了時点で、リーマン前に比べたドルの資金供給(マネタリーベース)残高を4倍増やした。ドル資金の増加相当額にほぼ見合う外貨が新たに中国に入り、人民銀行はやすやすと米QEによるドル増加額並みの人民元資金を追加供給してきた。
人民銀行から商業銀行につぎ込む人民元資金は、不動産開発向けなどに融資される。さらに預金となって銀行に還流し、銀行は新たに融資するという「信用創造」が活発になる。人民銀行が資金を新たに1供給すると、現預金はその5倍以上増えている。その比率は「貨幣乗数」と呼ばれるが、最近のデータでは日本は0・4、米国は1程度である。中国のマネーを増殖力は図抜けている。中国の現預金総額は2015年末で21・6兆ドル(約2600兆円)、実に日本の2・8倍、米国の1・7倍に達した。
以上の構造を念頭に置いた上で、米中のマネタリーベースと中国の軍事費の推移を追う。中国の軍拡はリーマン・ショック後に加速している。上述の通り、リーマン後のドルのQEとともに、人民元のマネタリーベースが飛躍的に拡大し、それに引き上げられる形で軍事費が膨張している様子がわかる。マネタリーベースの5倍以上の速度で現預金総量が増え、しかもそのドル換算額は元の対ドル相場管理のために安定している。膨らむマネーを背景に軍事費に資金が投入されるわけである。(つづく)
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