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2016-02-26 00:00
「新党」結成と言うより「旧党」への復帰
杉浦 正章
政治評論家
戦後の政党の離合集散史と比較しても、最も“野合色”の強い合流である。民主と維新両党が来月の合流を2月26日合意する。合流と言っても何の政策合意もなく、基本的には離党した民主党議員が復党するだけである。「新党」結成どころか、「旧党」への復帰に過ぎない。民主党代表・岡田克也は「自民党に対抗できる民意の受け皿になる」と胸を張るが、駄目と駄目が合流しても、駄目の二乗になるだけのことだ。これに生活、社民が加わっても、駄目の4乗になるだけだ。維新代表・松野頼久は、まずいご飯に乗せたまずい沢庵のようなもので、頂けない。とにかく合流協議の過程においては、松野の自己主張が異様に見えた。対等合併を主張し、党名も「民主の文字を入れるべきでない」と岡田に迫った。ところがNHKの世論調査で、自民党支持率が37.6%なのに対して民主党は9.6%と低迷。もっと低いのが維新で、わずかに0.8%だ。この0.8%という数字は世論調査では普通誤差の範囲であり、まさに「誤差の範囲政党」の代表が金切り声を上げても、国民への説得力はない。この合流の真の姿は誰が見ても「出戻り」であり、松野はその格好悪さを隠すかのように、自己主張を繰り返したのだ。
筆者は「民主」の文字は残すべきだと思う。良きにつけ悪しきにつけ人口に膾炙(かいしゃ)しているのであり、党名を変えれば政権を取れるものでもあるまい。立憲民主党、になろうが、民主自由党、日本民主党などになろうが、選挙やマスコミの略称は民主党となる可能性が高く、事実上変化はない。支持団体・連合にも党名を残すべきだとの声は強い。ここに来て合流が急展開したのは、共産党の動きが背景にある。もともと共産党は「国民連合政府」構想の旗印の下に参院選挙を戦う方針だったが、民主党右派がこれを嫌い、結局押しかけ女房的に、32小選挙区で候補を降ろして野党統一候補を応援する方向に転じた。これが民主、維新の背中を押したのである。影で生活の党代表・小沢一郎と共産党委員長・志位和夫の個人的関係が大きく作用しているものとみられる。
合流が固まったあと、岡田、松野が口裏をあわすかのように生活や社民との合流を口にしたのが怪しい。岡田は「2党が軸になって他の野党も合流を」と訴えれば、松野は「共産党以外のすべての政党会派に声をかけるべきだ」と唱えた。他の野党には当然小沢の生活や極左の社民も含まれる。民主党内には小沢一郎が消費増税に反対して分裂して以来小沢アレルギーが強いが、それにもかかわらず岡田が呼びかけるのはなぜか。それは「小沢・志位連合」からの圧力があるからだ。共産党が候補を降ろすにあたって、他の野党との合流を主張しているに違いない。ただでさえ「野合」(自民党幹事長・谷垣禎一)の見方が強いのに、民主党政権で連立に失敗した社民党や、庇(ひさし)を貸して母屋を取られた小沢まで取り込めば、新党は参院選までは一致できても、その後は再び党内抗争が発生するのは火を見るより明らかである。まるで馬糞を集めて筏(いかだ)を作るようなものであり、すぐにバラバラになるのは目に見えている。これを称して馬糞の川流れという。とりわけ首相・安倍晋三が衆参同日選挙を馬糞に打ち込めば雲散霧消してしまうだろう。
合流は、はっきり言えば悪あがきであり、悪あがきが国民の支持を得て政権を取れるかと言えば、無理だろう。民主党政権誕生の例を見ればすぐに分かる。当時の自民党は「消えた年金」という史上まれに見る「大失政」に加えて、財務相・中川昭一の泥酔事件や閣僚の数々の不祥事がひしめいて、国民もあきれ果てた体たらくであった。これがアンチテーゼとしての民主党に票がなだれ込んだ最大の理由である。しかし今度は民主党政権3年3か月の連続大失政が、改心した自民党に票を集めた。したがって小選挙区制においては、政権交代が容易になるのではなく、「大失政」や「大疑獄」が発生してやっと政権交代になるのだ。だから悪あがきや共産党票まで当てにした「野合」路線が国民の支持を受ける可能性は少ない。ただ選挙技術的に参院選単独なら自民党が厳しい結果となることは間違いないだろう。民主党政調会長・細野豪志が「合流により国民が喝采(かっさい)するとか、支持率が抜きん出て高くなるなど、大きく変わることはないだろう。将来の政権の選択肢を国民に示すことに意義がある」と述べているが、冷静な見方である。
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