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2016-02-16 00:00
アメリカとの「核共同」の必要性
加藤 成一
元弁護士
今回の北朝鮮による「水爆実験」と事実上の弾道ミサイルの発射は、日本の安全保障にとって深刻な脅威であろう。その上、核武装をし、増々軍事大国化した中国による東シナ海、南シナ海における力による現状変更の試み、などを合わせ考えると、日本は、自国の平和と安全、並びに国民の生命、自由、財産及び幸福追求の権利を守るためには、このような東アジアにおける安全保障環境の激変を、手を拱いて傍観することは許されないであろう。考えてみれば、今から70年前の憲法制定当時には、北朝鮮の「水爆」保有や長距離弾道ミサイルの開発、中国の核武装や軍事大国化などは、全く想定しなかった事態であろう。その上、北朝鮮に対する「制裁決議」すらまともにできない国連の機能不全の現状を見ても、今や、「非武装」を掲げる憲法9条によって、日本の平和と安全、そして国民の生命、自由、財産及び幸福追求の権利を守り切ることが到底不可能であることは、誰の目にも明らかであろう。このような東アジアにおける厳しい国際環境を考えると、日本の外交安全保障政策としては、以下に述べる点が重要であろう。
第一は、他国からのミサイル攻撃に対する抑止力及び報復力としての、自衛のための海上発射型巡航ミサイルなどによる「敵基地攻撃能力」の保有である。他国からの急迫不正の武力攻撃に対し、1億2000万国民は座して死を待つことなどできないからである。もとより、自衛のためであれば憲法上も合憲とされている。第二は、アメリカからの高高度防衛ミサイル(THAAD)の導入である。これによって、海上でのイージス艦発射ミサイルによる迎撃、陸上でのパトリオットミサイルによる迎撃と合わせ、三段構えで日本のミサイル防衛が一層強化されるであろう。第三は、アメリカと早急に「核協議」を行い、核ミサイルの発射ボタンに関して、アメリカが北大西洋条約機構(NATO)との間で取り決めているような「核共同」方式を、文書でアメリカに容認させることである。これによって、アメリカによる「核の傘」の実効性が担保され、日本の核抑止力が格段に強化されるであろう。
第四は、「非核三原則」を改め、有事におけるアメリカによる日本本土への「核持ち込み」の容認である。これも有事における日本の核抑止力及び報復力を格段に強化させるであろう。第五は、国家存亡の危機に備え、いざとなれば、極めて短期間に日本独自の「自衛的核保有」を可能とするための世論の啓発と、技術的研究を行っておくことである。自衛のための必要最小限の核保有は合憲とされている。独立国として、自国の存立と1億2000万国民の生命、自由、財産及び幸福追求の権利を、同盟国アメリカに100%依存することは不可能であるだけでなく、同盟国アメリカにとっても大きな負担であるから、究極的には、「自分の国は自分で守る」意志と覚悟と能力が必要不可欠であろう。
日本共産党などの左翼政党や、安保法制に反対する学者の会などは、日本を取り巻く厳しい国際環境を無視して、日本を守るための「抑止力」の重要性を否定し、「平和外交万能主義」を唱え、あたかも、日本の安全保障は「平和外交」だけで十分であるかのような倒錯した主張や宣伝を繰り返している。これは、かつて、旧日本社会党が主張し、国民から拒否された「非武装中立論」そのものであり、日本の安全保障にとって極めて危険であり有害である、と言わなければならない。賢明な日本国民は、決して彼らの非現実的かつ非合理的な主張や宣伝には同調しないであろう。
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