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2016-02-10 00:00
チャイナ・ショックは「リーマン」を超えるか?
田村 秀男
ジャーナリスト
先月の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)では、「中国経済がハードランディングし、世界経済がデフレに見舞われる」(ジョージ・ソロス氏)など、景気後退懸念の声が渦巻いた。確かにモノの動きを見ると、深刻度は2008年のリーマン・ショック時を上回っている。バルチック海運指数(BDI)と中国の鉄道貨物輸送量の推移を追う。「バルチック艦隊」を想起させるこの指数は、ロンドンのバルチック海運取引所が世界各国の海運会社やブローカーなどから石炭・鉄鉱石・穀物など乾貨物(ドライカーゴ)を運搬するばら積み船の運賃や用船料を聞き取って算出される。
中国の鉄道貨物輸送量は、筆者が信頼する数少ない中国の経済データである。BDIと鉄道貨物量はきわめて高い相関関係にある。中国の物流の激減は世界の海運市況を暴落させているのだ。BDIの過去最高値は08年5月の11793だが、リーマン後の08年12月には663まで落ち込んだ。ところが、15年11月には最低値を更新したばかりか、1月26日では354である。いわば底が抜けた急落ぶりだ。石油や鉄鉱石など国際商品相場の暴落とも連動していることから、チャイナ・ショック=世界デフレ不況という論理が成り立つわけである。
問題は、元凶になっている中国の過剰生産、過剰供給の調整のメドがたたないことで、その見通しの悪さから、世界景気の先行きについて悲観論が地球全体を覆う。すると、全体的に、企業は賃上げや設備投資に慎重になり、消費者はできる限り支出を抑えるようになる。それこそが恐るべきデフレ心理だ。特に「20年デフレ」から抜けきれない日本では、デフレ病が再燃、深刻化しかねない。もちろん、石油などエネルギーや原材料の輸入コスト減少は日本からの所得流出を大きく減らすので、プラスの面も大きい。ソロス氏のように「大変だ」とうろたえずに、間違った政策をただして、ピンチをチャンスに変えることが政府の責任だ。
誤った政策とは、消費税増税であり、緊縮財政である。慢性デフレを引き起こしたのは1997年度の消費税増税と歳出削減だし、アベノミクスを失速させたのは14年度の消費税率引き上げである。最近では増税推進論者たちも、現実を無視できず声が小さくなってきた。もはや、日銀による追加金融緩和だけでは、デフレ再燃圧力をはね返せない。春闘もこの分では盛り上がりそうにない。民間頼みではなく、やはり財政の出番である。当面の焦点は17年4月予定の消費税率再引き上げだ。安倍晋三首相はこれまで「リーマン・ショック級の危機がない限り、予定通り実施」と繰り返してきたが、チャイナ・ショックによる衝撃度が「リーマン」を超える恐れは十分ある。
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