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2016-02-02 00:00
(連載2)米金利と石油の国際政治学
田村 秀男
ジャーナリスト
ペトロチャイナは国有エネルギー企業の中核として、石油相場が上昇を続けているとき、イランなど中近東、ベネズエラなど中南米、スーダン、ナイジェリアなどアフリカの産油国への進出を担ってきた。FRBのQEが終了とともに、原油相場が落ち込むと、海外プロジェクトの多くは巨大損失しか生まなくなり、相次いで撤収に追い込まれている。ワシントンはFRBの政策転換によって、反米産油国に浸透する北京の戦略を頓挫させつつある。
ロシアと中国は今後、結束を強めるだろうか。1月中旬に初の総会が開かれるアジアインフラ投資銀行(AIIB)は中露間の石油・ガスのパイプライン建設資金提供の母体となるが、ドルが立ちはだかる。AIIBには世界最大の資金の出し手である日本とドル金融の本家米国が加盟していない。このため、AIIBが外貨調達のために発行する債券は米格付け機関から格付けを得られていない。得られたとしても、信用度は低く、金利が高くなる。米利上げも足かせになる。
わが国の主要メディアの大半が、昨年のAIIB設立時には「バスに乗り遅れるな」という論調を掲げ、中国共産党が仕切る習近平国家主席のためのこの多国間融資機関への参加を安倍晋三政権に迫った。AIIBが中国膨張の一環であるという現実を無視した甘い考えだ。不参加はまさに正解だった。AIIBは人民元建ての資金を活用するしかない。元は16年10月から国際通貨基金(IMF)・特別引き出し権(SDR)構成通貨入りする予定だが、元や株式の相場は暴落不安がつきまとうし、金融市場は閉鎖的だ。貴重なエネルギー資源の代金を使い勝手が悪い通貨で受け取るのはばかげている。プーチン大統領としても元建ての取引には慎重になるだろう。
ワシントンの金融政策によって追い込まれるプーチン政権はウクライナ、中東でこれまで以上に武力にものを言わせようとするのか。習政権は米利上げというデフレ圧力によって膨れ上がる巨大企業債務の重圧の中で、破れかぶれのダンピング輸出攻勢をかけるのか。あるいは、対米協調に転じてワシントンの警戒を解こうとするのだろうか。(おわり)
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