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2016-02-02 00:00
鮮やかすぎて怖い安倍の“ダメージコントロール”
杉浦 正章
政治評論家
鮮やかすぎるというか、つきについているというか、すごすぎるというか、安倍政権は本当に向かうところ敵なしかと思いたくなる。あまりに巧みなる政権運営には驚く。一見地獄を見るような「甘利の逆境」報道を日銀発の「マイナス金利」で一挙に吹き飛ばすという奇想天外な“ダメージコントロール”。これが利きに利いて、内閣支持率は下がるどころか、驚異の上昇で50%を突破した。株価は2月1日も全面高となり、年初以来アベノミクスに逆行する「円高・株安」にくさびを打ち込んで「円安・株高」の好循環へと導きつつあるかに見える。甘利疑惑でいきり立った野党は、さすがに支持率を見て「下手に突っ込むとやられる」(民主党幹部)と怖じ気づいたか、ろくな抵抗もしないまま国会は早くも正常化。好事魔多しなどという常套文句は使いたくないが、よほど重心を下げないと、後が怖いことは確かだ。
日銀が金融緩和に踏み切るであろうという予測はされていたが、マイナス金利だけは総裁・黒田東彦が1月18日に明確に否定したことから、予想の外に置かれがちだった。しかし、黒田は23日のダボス会議に行く前に事務当局に対して「追加の金融緩和措置を考えておくように」と指示している。マイナス金利を含みとしたいわば「日銀究極の秘策」の指示であったようだ。そして発表が29日の政策決定会合の後だから、28日の甘利辞任の直後。日銀が政局向けに図ったとは思えないが、そうでなければあまりにも絶好のタイミングであり、安倍を天が見放していないことになる。なぜなら「甘利」を「日銀」が新聞紙面から追い払ってしまったのだ。もちろん黒田パズーカの第3弾はこの時期を除いてはあり得なかった。企業は来年度に向けて春闘の賃上げや、設備投資計画を2月に立案するからだ。この時点でやらないと、次の政策決定会合は3月であり、間に合わないからだ。しかし黒田を含めて9人の政策委員のうち5人が賛成、4人が反対に回った。4人はみな安倍政権以前の政権で任命された委員であり、民主党の政策を反映するかのようにアベノミクス反対派のようだ。3月には1人が交代するから、反対派は3人に縮小されるだろう。
こうして甘利辞任は29日朝刊に、日銀金利は30日朝刊でそれぞれ全面展開の報道という形になった。報道各社は30、31日に世論調査を実施したが、国民世論は景気対策に目を奪われ、「甘利辞任」は一過性で影響が生じなかった。各社の内閣支持率は、毎日が51%でプラス8ポイント。不支持は30%でマイナス7ポイント。読売が支持56%(+2)不支持34%(-2)、共同が支持53.7%(+4.3)不支持35.3(-2.9)という結果で、おしなべて50%越えだ。この高支持率が示すものは、国民意識の動向を探る上で極めて興味深い。国民は何と言っても自らの生活向上が大切なのであり、閣僚の疑惑などは二の次三の次なのである。アベノミクスはかつてないほど政治と金融・経済が一体化した上で成り立っており、これが支持率に反映しているとしか思えない。デフレの暗い影を吹き払おうと懸命に戦う安倍の姿が好感されているのだ。企業は史上最高の利益を上げ、12月の完全失業率は3.3%だが、これが2%まで下がるという予測もある。3.3%でもほぼ完全雇用だが、2%といえばまさに完全雇用である。失業率2%台は1980年から1994年まで続いているが、それ以来の数字となる。
こうして年明け以来円高・株安の悪循環が円安・株高に向かえば、アベノミクスへ、ひいては政権への追い風になるのだ。問題はこの好調が何処まで続くかだ。とりあえずの勝負は夏の国政選挙まで続かせられるかどうかである。阻害要因がないわけではない。化けの皮がはがれたようなバブル崩壊後の中国経済の低迷が続きそうなことだ。加えて甘利の後任の経済再生担当相となった石原伸晃だ。この政治家は失言癖がほとんど病気のように染みこんでいる。まるで言いたいことをを言って、仲間と冗談を飛ばし合っている湘南の坊ちゃんのような軽い調子で失言を飛ばす。就任後も、日銀マイナス金利への感想を聞かれて、秘書の出したメモを自分の手で払いのけて「自分の言葉で話す」と宣うたが、この自分の言葉が危機の根源であることが分かっていない。当然野党は石原の失言に狙いをつけて、質問を展開する。公明党代表・山口那津男が「細心の注意を払って国会を乗り切っていただけるものと期待している」と、石原に異例のクギを刺した。彼ばかりは事務当局の答弁書とメモでしか発言させないようにすべきであろう。国民の信任が高いときこそ、内閣は重心を低くしないと高転びに転ぶ危険があるのだ。また野党も甘利という絶好の攻撃目標を失ってもなお民主党幹事長・枝野幸男が「真相究明が必要だ」と幕引きを拒み続けている。しかし疑惑は、既に東京地検が乗り出しているのであって、真相究明は司直の手に委ねるべき問題だ。野党も国会論議は経済を主軸に据えるべきであり、自ら疑惑解明をしようとしても無理がある。疑惑追及路線を突っ走っても国民の支持は得られまい。
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