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2016-01-19 00:00
岡田の急旋回で共産党の思惑破たん
杉浦 正章
政治評論家
酔って肩組んで一緒に歩いていると足をかけられると言うのが永田町だが、こともあろうに共産党委員長・志位和夫が民主党代表・岡田克也に引っ掛けられ、仰向けにすっ転んだ。昨年までは誰がみてもちょっと薄気味悪い“秋波”を志位に投げかけていた岡田だが、急旋回して共産党から離れた。岡田は共産党の主張する「国民連合政府」はもとより、その前提になる参院選での選挙協力にもつれない姿勢を示しはじめた。1月18日で代表就任1年目を迎えた岡田に袖にされて、志位の立場はない。もともと危うい小沢一郎の口車に乗って「岡田氏を信頼している」と「選挙協力路線」を突っ走った志位は、党内的に路線転換の責任を問われる恐れがある。
しびれを切らしたのが共産党書記局長・山下芳生。18日「前提条件なしにとにかく協議を開始すべきだ」と“逆秋波”を送っているが、岡田からは芳しい返事はない。むしろ岡田は協議開始に慎重だ。岡田が一段と右傾化路線に戻りはじめたのは16日放映のBSテレビだ。ここで「野党統一候補が共産党の支持を受けた結果、票を減らす可能性もある」とまで言い切った。もともと民主党内には右派から「共産党の支援を受ければ2万票もらって3万票が逃げる」という批判があった。岡田は昨年の安保国会直後は、共産党でなければ夜も日も明けない姿勢を取っていただけに、この豹変ぶりはあっけにとられるほどだ。岡田は選挙協力について「市民団体が呼びかけて候補を立て、我々が推薦する。共産党が推薦するかどうかは言う立場ではない」と、素っ気ない。要するに2009年の総選挙では、民主党躍進を感知した共産党が自主的に候補擁立を控えた例があり、これに戻ろうというわけだ。共産党の自主的な降板方式だ。
志位が怒り心頭に発しているだろうと言うことは想像に難くないが、安保法制反対で国会前で一緒に手をつないだからと言って、小沢の口車に乗って自民党政権打倒のための「国民連合政府」と選挙協力をぶち上げた共産党も甘い。通常国会では異例の開会式に出席するという柔軟路線まで示してみせたが、今からみると、まさに「いじましい」限りであった。岡田が方針転換した背景は大きく言って三つある。一つは、党内の右派の攻勢である。元国家戦略相・前原誠司は、共産党との選挙協力について「私は選挙区が京都なので、非常に共産党が強いところで戦ってきた。共産党の本質はよく分かっているつもりだ。シロアリみたいなものだ。ここと協力をしたら土台が崩れる」と、“共産党シロアリ”論を展開して反対。政調会長・細野豪志は「解党要求」をぶち上げ、元外相・松本剛明にいたっては離党した。松本の離党は岡田にとって相当なショックだったようだ。第二の理由は、左派の長老・重鎮の相次ぐ引退表明だ。日教組で参院副議長の輿石東、リベラル系の江田五月、労組出身の直嶋正行らが引退表明したのだ。とりわけ、輿石は小沢と近く、陰に陽に民主党に左傾化圧力をかけ続けてきた。この重圧が取れるのはもともと右寄りだった岡田にとって、都合の良いこと限りがない。
第三の理由は、民主党最大の支持団体・連合からのブレーキだ。岡田と15日に会談した会長・神津里季生は「最初から共産党が応援の輪の中にあるというのは違う。候補者を後から共産党が応援することはあるかもしれないが」と岡田の共産党との共闘にクギを刺した。岡田と神津は「共産党のイニシアチブ排除」で一致したのだ。さらに両者は首相・安倍晋三がこの夏ダブル選挙に打って出る可能性が濃厚であるとの見通しで一致。「ダブルをやられたら野党共闘はぐちゃぐちゃになる」との判断でも合意した。ただし、民主党は2009年の方式を共産党が進めるように促してゆく方針だ。民主党躍進をもたらした原動力の一つが共産党がかなりの選挙区で候補を立てなかったことにある。共産党の支持者の8割程度が民主党に投票すると言う結果を招いているからだ。したがって、「共産党の自主的立候補辞退」方式が成功すれば、参院選だけのシングルでは、自民党が大きな影響を受けることは確実だ。
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