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2016-01-18 00:00
北朝鮮の「水爆」実験がもたらす日韓関係の改善
児玉 克哉
社会貢献推進機構理事長
歴史的ともいわれた日韓両国の慰安婦問題に関する合意の後、韓国ではまだ反発が収まっていません。合意を無効にするという声もあり、デモや集会なども報道されていました。特に、慰安婦問題では大きな影響力を持つ挺対協(韓国挺身隊問題対策協議会)は、合意は日本の法的責任を明確にしていないということで受け入れを拒否しています。韓国の大手新聞社の中央日報は、1月5日朝刊の世論調査の結果を報道しています。「最終的かつ不可逆的な解決」との合意内容に「同意できない」が58.2%で、「同意する」が37.3%でした。
日韓政府間で「合意」はしたものの、これから相当な山があると考えられてきました。メディアも「合意」に否定的な論調もかなりあるようでした。北朝鮮問題が、この状況を大きく変える可能性がでてきました。韓国のメディアでの慰安婦問題に関する報道がかなり吹っ飛んでいるようです。日本でも韓国でもメディアは移り気です。大きなニュースがあるとそちらに関心が向き、それまでのテーマが小さな扱いになります。特に北朝鮮の核兵器問題は、日米韓の連携が重要となります。日本と韓国との対立がある中では、北朝鮮に対応するのは非常に難しいのです。今回の北朝鮮の核実験の前は2013年2月に行われたものです。約3年間、核実験は行われず、韓国と北朝鮮はぎこちないながらも関係改善を目指すものと思われていました。
朴大統領は「平和統一の基盤構築」の実現を政策に掲げ、北朝鮮にはどちらかといえば宥和的政策を打ち出してきました。北朝鮮への関心よりも、反日への関心の方が強かったといえます。北朝鮮は国内での粛清などのニュースが流れるものの、この期間、対外的にはかなり静かであったと思います。日本においても、北朝鮮のニュースは国内の粛清などが報じられる程度で、対中関係や対韓関係の方がはるかに関心の高い課題でした。今回の北朝鮮の核実験は、朝鮮半島に緊張を走らせます。朴大統領は「世界の平和と安全に対する正面からの挑戦」と厳しく北朝鮮を批判しています。水爆実験であったかどうかは疑問が残るにしても、さらにレベルアップした核兵器の実験ではあったようです。北朝鮮の国境とソウルの距離はわずかです。核兵器は非常に大きな脅威になります。
韓国にとっての現実的な課題は、北朝鮮問題と経済問題です。今の日本が韓国の軍事的な脅威になることは考えられません。この北朝鮮問題と経済問題の二つの課題においては、明らかに、日韓のさらなる連携は重要です。アメリカも、対北朝鮮、対中国の外交戦略を作る上で、日韓の関係改善を望んできました。一気に日韓対話が活発化する可能性があります。朴大統領も北朝鮮の脅威が顕在化すれば、国内での不満を抑えながら、日韓関係の改善を行っていくことが容易になります。北朝鮮がどういう意図で核実験を遂行したのかわかりにくいところですが、結果として日韓関係の改善を大きく前進させることにつながりそうです。
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