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2016-01-15 00:00
(連載2)東アジアにおける日本の安全保障の展望
牛島 薫
団体職員
そのような中での経済制裁は、中国を国際社会の優良なパートナーとなるよう誘導しようとしてきた従来のアメリカの努力と矛盾するだけでなく、幾多の苦難の末に合意に達したTPPの可能性をも自ら稀釈する。他方、中国は経済規模が既に日本の倍以上、米国の6割に達し、経済関係は密接だ。故に日米に対する悪影響も尋常ではないため、それを上回る損害が発生する歴史的事件が起きることがなければ経済制裁は視野に入りにくい。また、経済制裁は国際社会が足並みを揃えて行わなければ効果がないが、対中封じ込め体制を米国が確立できうるかといえば、中国が主要なプレイヤーとなっている今となっては至難の業と言わざるを得ない。
また、東シナ海・南シナ海における中国の行動は今日に始まったことではなく、中国が滑走路試験を行う事自体も周知のステップでありサプライズではない。そして、巡視船の体当たりで東南アジアの漁船を沈没させたり、あたご型護衛艦をも超える排水量の強力な海警船舶を配備したりするなど中国の行動は近隣国に対して苛烈なものが続いているが、それにもかかわらずアメリカは抑制的である。なによりも、経済制裁は中国のような大規模な軍事力・経済力を持つ独裁国家に対しては効果を期待できまい。むしろ、現在の中国の漸進的侵襲を大幅に超える事件によって説得力が生み出されるでもなければ、経済制裁をしたアメリカに「先制攻撃」の責任が帰されかねない。
加えて、中国人民の視点に立てば、経済制裁を受けることは共産党の海洋戦略の大義がまさしく証明されたように映る可能性が高い。中国人民が九段線や第一列島線の制海権を得ようとする共産党に対して強固な支持を示し、反米感情が爆発することが予想される。以上を考えると、アメリカは当分中国の経済動向を中心に様子見をするのではないか。軍事的には従来の姿勢を堅持するにとどまり、衝突につながるような主体的な手は控えるであろう。故に、日本が自ら東アジアの安全保障に主体的な役割を果たさねば、威圧的な諸国に主導権を取られ無力感が東アジアを覆うに違いない。
それを避けるためにも、米国のアジア外交がより不確定なものになるこの1年で日本がすべきことは、第一にアメリカに中国との摩擦から目を背けないよう促し続け、且つ日本政府自らのメッセージとして一部の国による恫喝や力による現状変更に対抗する体制が整いつつあるという姿勢を示すことである。第二に、近隣外交が急激に進展する可能性があるのも今年かと思う。ASEAN・台湾などとは深刻な危機感を共有しているからだ。豪州など揺り戻しが起きそうな国もあるが、彼らとの協同一致をより深化させるのに今以上の好機はない。韓国についても不安要素が多いが日本にとっては好条件が揃っており、日韓友好元年にすることも不可能ではあるまい。今年1年は日本にとって安全保障面で大きな役割を果たせるか否か重要な年になる。(おわり)
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