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2016-01-14 00:00
(連載2)2016年世界経済の焦点はやはり中国
田村 秀男
ジャーナリスト
対照的に、中国企業のほうは相変わらず債務を膨らませている。デフレ圧力を受けた企業は返済ができず、金融機関の潜在的な不良債権が増える。中国の製品価格指数を見ると、3年末にマイナスに転じた後、下落幅は広がる一方で、15年10月には前年比マイナス7・4%となった。企業の借入金利は14年秋の6%が1年後には4・35%まで下がったが、企業にとっての実質金利負担は12%近い。日本ではありえない異常な高金利だ。中国の場合、国有企業は党幹部の口利きで銀行から返済繰り延べや追加融資を受けられる。
さらに高利回りの理財商品発行によって資金難から当面は逃れる。理財商品を含む中国の国内債務証券発行額は15年3月末で4・7兆ドルに上り、前年比で10%伸びている。特に、不動産業大手が債務証券発行を急増させている。中国側の統計によれば、対外債務は銀行融資・証券合わせて1・3兆ドルで前年比21%増と膨らんでいる。1件でも「デフォルト」となれば国際金融市場を揺さぶるだろう。それは上海株暴落時のケースから見ても明らかだ。債務問題緩和のためには、人民元の大幅切り下げが一番手っ取り早い。そうすれば国内産業界の輸出増強とデフレ圧力を緩和できる。
その元は16年10月から国際通貨基金(IMF)・特別引き出し権(SDR)構成通貨となる。IMFは、元を数年後には変動相場制に移行させるよう求めているので、この際、管理変動相場制を放棄して、市場実勢にまかせるまま元安を放置すればよい。ところが、習近平政権にはその気は全くないようだ。今でも資金流出は止まらず、人民銀行は外貨準備を取り崩して元を買い支えざるをえない。「元安容認」となると、資本逃避に加速がかかる。外準は14年6月の4兆ドルから15年11月には3・44兆ドルまで落ち込んだ。約5兆ドルとみられる対外負債を考慮すると、外国からの借金が減ると雲散霧消しかねない。中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)は対外借り入れを容易にするための隠れみのなのだ。
ドル相場は円、ユーロなど主要通貨に対して上昇基調にある。中国がドルにほぼ連動させる外国為替市場の管理変動相場制を続けると、元高によるデフレ圧力がかかる。今後、米国が追加利上げに踏み切ると、中国の債務不安はさらに深刻化する恐れがある。日本としては、中国の債務爆弾に振り回されないよう、財政・金融の両輪をフル稼働させ、内需主導の成長を確保するしかない。消費税増税どころではない。(おわり)
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