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2006-12-22 00:00
公式な制度と非公式なネットワークの多層化と共同体
本山 健一
大学院生
東アジア共同体を考えるにあたって、しばしば、公式の制度に裏付けられた地域枠組みを目指すのか、あるいはもっぱら非公式なネットワークの活動の充溢を以って共同体と位置づけるのかという理論上の選択肢がある。この問題は、統合論というテーゼと非統合論(非制度統合論といったほうが正しいかもしれないが)というアンチテーゼに還元される。統合論者は、東アジアにはEUのような公式な制度化が欠如しているとして、そのような公式制度の発展こそが東アジア共同体構想には必要であると論じる。非統合論者は、東アジアにはEUのような公式制度の導入は馴染まず、非公式のネットワークを蓄積することによって共同体はできてくるものだと主張する。
現在の東アジア諸国間の政治体制の著しい格差を考えると、東アジア共同体という地域枠組みに、欧州連合(EU)のような統合理論が適用されることは、中期的に見ても考えにくい。かといって、ネットワークの構築のみで共同体が形成されるか否かといえば、疑問の余地もある。ある地域を共同体という言葉で定義するには、少なくとも、域内諸国の行動が共通の価値と規範に基づいていることが必要であり、FTAやEPA等の機能的統合のみでは、共同体と呼ぶに足らないからである。
統合論か非統合論かという2つの選択肢のいずれかを単純に選び取るというのは、実は非現実的ともいえる。共同体における制度化の議論は単純な二分論とはなりえない。このことは、どんな国の国内社会においても、ハードな制度(法制度)とソフトな制度(道徳)という、2つの制度の混在があることを見ても明らかだ。統合と非統合との間には、様々な態様が存在する。東アジアにおいても「東アジア・シンクタンク・ネットワーク(NEAT)」は一種の非公式ネットワークの例である。他方で、「ASEANプラス3」のような公式な制度に近い形の組織も存在する。この中間には「ASEAN地域フォーラム(ARF)」や、「東アジア首脳会議(EAS)」という枠組も存在する。
共同体論争におけるシンテーゼの核心は、硬軟両制度の複合的な組み合わせという点にあるのではないだろうか。公式な制度と非公式なネットワークの多層化、多元化という考え方だ。「トラック1」のみでも限界があり、「トラック2」のみでも限界があるのと同様であって、そこを補う「トラック1.5」のアプローチも踏まえた柔軟な方法論が求められるのである。2つの理論上の選択肢は、決して二者択一のものではない。
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