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2016-01-07 00:00
米の利上げが中国の「債務爆弾」に火をつける
田村 秀男
ジャーナリスト
米連邦準備制度理事会(FRB)は利上げにより、2008年9月のリーマン・ショック後の質量両面にわたる史上空前絶後の超金融緩和に決別したが、巨大債務の泥海にどっぷり漬かっている国はそうはいかない。筆者が「債務爆弾」を指摘した中国が代表である。中国の企業債務(金融機関を除く)残高はダントツの世界一だ。経済規模(名目国内総生産=GDP)で米国の6割程度なのに米国を凌駕しており、膨張規模もでかい。GDP比でみると、15年6月末で1・6倍。バブル時代の日本企業の1・4倍(90年)を超える。
もちろん、資本主義経済の成長は債務の増大で支えられる。企業は借金をしては設備投資し、雇用を増やしていく。その結果、需要が創出され、高度成長に導くという好循環となるなら、「よい債務増大」と評価できる。それが「悪い債務」に転化したのがバブル経済である。ちょうど正常な細胞ががん細胞に変わって増殖するのに似ている。「バブルは破裂してから初めてバブルと定義できる」とアラン・グリーンスパン元FRB議長は嘆いたほど、「良い」から「悪い」方への転換点の見極めは難しい。そんな事情もあって日本の専門家や親中メディアは中国バブルを深刻と見ないが、どっこい、筆者の目はごまかされない。
中国の企業は、製品価格が下落を続けるデフレ病に冒されている。値下がり分をカウントした企業にとっての実質金利は12%にもなり、債務返済できない。返済できないから、貸し手である金融機関にとっては不良債権がどんどん増えていくはずだが、中国側統計では不良債権は低水準のままである。なぜか。答えは簡単。要するに、党中央が企業と金融機関を支配している中国では、党幹部の指令でいくらでもカネが動く。債務返済できなければ銀行が追加融資したり、返済繰り延べに応じる。国有企業大手は高利回りの理財商品という債務証券を発行して資金調達する。さらに株式市場で新規上場したり、増資してゼロコストの資金を調達する。6月の上海株暴落の背景には、野放図な新規上場の横行がある。あせる習近平政権は市場を統制しながら新規上場を認可するなど、相変わらずの国際ルール無視だ。こうして企業債務は雪だるま式に増長を続ける。
ではいつ、どうやって巨大債務爆弾は破裂するか。おそらくだが、どこかが対外債務を払えなくなった途端にそうなる。中国企業の対外債務は1・3兆ドル(約158兆円)にのぼる。大半はドル建てだから、人民元の下落が続くと返済負担がさらに重くなる。16年も米利上げ、ドル高が続けば、いよいよ中国企業は追い込まれる。バブル崩壊したあとは何が起きるか。日本の場合、慢性デフレによる「空白の20年」だ。北京は日本の二の舞いを避けようと、「国際通貨人民元」を武器に、対外攻勢を強めるだろう。ますます要警戒だ。
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