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2015-12-22 00:00
パリ協定の実効には国際ガバナンスの確立が必要
児玉 克哉
社会貢献推進機構理事長
気候変動を抑制するための世界的な合意「パリ協定」が、12月12日にパリにて採択されました。まず画期的なことは参加国の多さです。協定は190を超える国が承認していますから、ほぼすべての国が地球温暖化の抑制の枠組みに加わったということです。これはこれまでの枠組みからすると素晴らしい展開といえます。1997年の京都議定書はその時点では画期的と言われましたが、CO2の排出量の削減義務を負ったのは僅かに先進国35ヵ国。最もCO2の排出量が多い、あるいは多くなるアメリカ、中国、インドは入っていなかったのです。削減義務を負った先進国35ヵ国のCO2の排出量は世界の排出量の約12%。しかもこれからは中国やインド、他の発展途上国がどんどんと排出量を伸ばしていきます。つまり、京都議定書の枠組みではとうてい地球温暖化問題に対応することができなかったのです。世界全体の排出量はどんどんと膨らむ中で、焼け石に水という感じがあり、義務を負っている国の中ではなぜ、私たちだけが?という割り切れない気持ちがでてきます。
今回のパリ協定は参加国が大幅に増えましたから、まさに地球的な問題を地球的な参加者で解決していこうという枠組みは出来たと言えます。成果はいくつも上げることができます。世界の気温上昇を産業革命前から2度未満に抑えることを目標としたこと、さらに1・5度未満を目指すことの重要性も明記したこと、今世紀後半に海や森林による吸収分と相殺して排出量を実質ゼロとする長期目標を盛り込んだこと、などが挙げられます。何か素晴らしい展開のように見えますが、実際には「道はるかに遠し」という感じです。なんといってもその実効性の問題です。パリ協定では、各国が削減目標を提出し、5年ごとに見直すことを義務づけています。こうした目標を作ることや見直しをすることには法的拘束力がありますが、目標の達成は義務ではなく、罰則などもありません。基本的に自主的努力を推進するというものです。これでどこまで実効性があるのか、といことです。
これまでのこうした合意の経験から、目標を立てても、現実は大きく異なることがあります。CO2の削減においては、まず重要なのは景気の問題です。景気が落ちれば、CO2の排出量は削減されます。逆に景気が良くなれば、CO2の排出量はあがります。特に先進国では、CO2削減の努力よりもこの景気の善し悪しの方が大きいレベルです。また人口の増加も大きな要素です。人口が減る先進国と人口が急増する途上国は、条件が異なります。環境技術がどこまで普及しているかも削減の伸びしろを左右します。こうした主要な要素を加味した上で、削減目標、義務を決めていかなければ、結局は実行できないものになります。
私は、各国のCO2削減目標・義務は景気の状況や人口問題なども含めた変動性にすべきだと思っています。景気が落ち込む時に目標を達成できても、景気が良くなれば元の木阿弥。環境技術だけでなく、経済や社会学などの専門家も含めて、変動性の数値目標を各国で出していくことが必要です。そしてそれは単なる「目標」ではなく、国際的な義務を負うものとすべきです。今回のパリ協定は画期的ではあります。しかし、このレベルでは現実の問題に対処できるとは思えません。環境問題では特に国際的なガバナンスの問題が重要になります。どのような国際社会を作るのか。おそらくここを明確にしなければ、ほとんど実効性のないものとなるのでしょう。そのための努力は別の次元で必要です。
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