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2015-12-17 00:00
(連載2)日本の重大脅威となる「人民元SDR化」
田村 秀男
ジャーナリスト
これまで、主として国内およびごく限られた国でしか通用しないローカル通貨だった元が国際通貨に化ける。ドルなどと自由に交換できるので、元決済を受け入れる国・地域は格段に広がる。人民銀行が党の戦略に応じて元を刷る。政府と金融機関、国有企業がその資金で石油など戦略物資を入手し、軍は空母などの大型兵器の購入資金に充てる。
中国は固定資産投資による高度成長路線が限界にきており、経済全体が崩壊しかねない。手っ取り早い挽回策は、対外投資を増やして、輸出を増強することだが、その決め手となるのが、中国とユーラシア大陸および東南アジア、インド、中東・アフリカを結ぶ、陸と海の「一帯一路」のインフラ・ネットワーク整備構想だ。担い手は、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)である。AIIBは国際金融市場でドルなどの外貨を調達してインフラ資金とする計画で、英独仏など欧州や韓国、東南アジア、ロシアなどが参加したが、世界最大の債権国日本と国際金融シェアが最大の米国が参加しないこともあって、その信用力は必ずしも強くはない。
これでは、国際金融市場での長期・低利資金が必要となるインフラ資金の調達は困難だ。しかし、人民元が国際通貨になれば、その障害は解消に向かう。中国は「国際通貨」人民元を振りかざしながら、アジア全域をその経済圏に塗り替えようとするだろう。日本の銀行や企業は、人民元なしでは、ビジネスができなくなる。すでに金融界は浮足立ち、中国嫌いが評判の麻生太郎財務相ですら、中国側に東京に「人民元決済センターの設置」を要望する始末だ。中国との通貨スワップに頼る韓国はますます北京に頭が上がらなくなるだろう。
対抗する秘策はあるのか。米国の対中警戒派と結束し、人民元の変動相場制移行と金融自由化を早期に実行させることだ。為替や金融の自由化は中国共産党の支配体制を無力化させるからだ。問題は、通貨外交を担う日本の財務官僚である。IMF理事会の椅子に座る面々は、中国の「人民元SDR化」工作には恬淡(てんたん)としていながら、日本には予定通りの消費税増税を迫っていると漏れ聞く。これでは、日本は消費税増税ショックで沈み、中国は国際通貨元で息を吹き返す。語るに落ちる話ではないか。(おわり)
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