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2015-11-19 00:00
小沢と共産党が「なりふり構わぬ症候群」
杉浦 正章
政治評論家
生活の党代表の小沢一郎と、共産党が「なりふり構わぬ症候群」とも言うべき身体・精神症状を示している。共産党委員長・志位和夫や前委員長・不破哲三は、「選挙に勝つためには何でもやる」という姿勢だ。参院選で1選挙区2万票と言われる票を野党統一候補に差し出す構えを見せれば、小沢はこれを背景にいったんつぶれた「オリーブの木」構想を実行に移すのだという。一時は「老兵は去るのみ」と意気消沈していた73歳の小沢が、「野党統一候補で一強自民党を完敗させる」と言うまで元気になったのだ。しかしはっきり言って、特殊な層には支持されるが一般国民が最も信用していない政治家個人と政党は小沢と共産党である。この「国民と政策不在の野合」が、来年の参院選の勝負を左右するのだろうか。小沢と共産党の接触は、何と言っても安保関連法案をめぐる戦いでの一致である。もともと不破とは当選が同期で仲が良かったし、志位とも反安保闘争を機に接触の度合いを深めた。国会前で民主党代表の岡田克也らと一緒に手を組んでデモ隊を扇動し、親密度を高めたのだ。そして、選挙の勝利がすべてに優先する「政治屋小沢」が、これまで手つかずであった共産党票に目を付けた。手つかずと言っても、2009年の総選挙では、民主党躍進を感知した共産党が、自主的に候補擁立を控えた例があり、小沢はこのころから共産票を「利用出来る」と踏んでいたのだ。
その活用の実践が8月の岩手知事選である。小沢の根回しで民主、共産、維新、生活の協力を実現して、現職有利に導き、自民党をして候補擁立断念に追い込んだのだ。勢いづいた小沢は、弁舌巧みに志位らを説得、鉄の団結の党を“たらしこんで”しまったのだ。共産党は、安保が成立したと見るやすぐに志位が「国民連合政府」構想を打ち上げ、野党に選挙協力を呼びかけた。小沢がこれに賛同の声を上げたのは言うまでもない。そして岡田とも会談して、共産党との選挙協力で一致したのだ。国政選挙での共産党取り込みに成功したのであるから、小沢の“豪腕”ぶりいまだ衰えずということになる。岡田にしてみれば共産党票をそっくりいただければ、参院選圧勝の夢と希望が湧くのであり、党勢の衰退を思えば棚からぼたもちの話である。一方共産党も、志位が柔軟路線に転換、日米安保条約の撤回を求める党方針を凍結するという路線上の大転換を示し、天皇制の維持までも明言する始末だ。良く党内が治まると思える戦略である。言ってみれば主義主張を凍結して、選挙の票だけを目当てに連合を組むという「野合路線」を、臆面もなく選択したのだ。冒頭言った小沢の「なりふり構わぬ症候群」は共産党にも伝染したのだ。しかし最大の誤算は安保法制が国民に受け入れられ始めており、いくら通常国会で扇動しても、今夏のムードが復活することはないことを感知していないことだ。
さすがに民主党内右派は黙っていない。前原誠司と細野豪志が維新の前代表・江田憲司と11月11日夜会談、民主党解党で合意に達した。岡田に対するけん制である。前原は共産党との選挙協力について「私は選挙区が京都なので、非常に共産党が強いところで戦ってきた。共産党の本質はよく分かっているつもりだ。シロアリみたいなものだ。ここと協力をしたら土台が崩れる」と、“共産党シロアリ”論を展開している。慌てて幹事長・枝野幸男が共産党書記局長の山下芳生に「失礼な表現があった」と陳謝したという。民主党内は右派だけでなく、旧社会党系議員からも、危惧の声が聞かれる。今後の展開だが、小沢の言う「オリーブの木」と共産党の国民連合政府とは十分に折り合いが付くものだろう。何もイタリアの真似をしなくてもいいと思うが、小沢の構想は、既存の政党とは別に選挙の届け出をする政党を作り、そこに野党政治家が個人として参加する構想だ。共産党の構想も「国民連合政府で一致した政党が選挙協力をする」ことに主眼を置いており、共産党が政権につくかどうかは明確にしていない。さすがに小沢も外聞が悪いと思ったか、17日のTBSラジオで「共産党自身は一緒になる気はない。選挙協力のところまでやるだけで、そんなにヒステリックに心配することはない」と否定している。
これはまず嘘だろう。民主党政権では社民党まで参加した政権を作っており、選挙に圧勝するようなことがあれば、その勢いをかって共産党まで政権に入れるに決まっているからだ。もっとも参院選に勝てるかどうかは全く未知数だ。いくら公明党票に匹敵する組織票があるからといって、有権者が国政選挙で小沢と共産党が“つるむ”候補に投票するかは疑問があるからだ。民主党が政権についたときも風が吹いたし、維新の躍進時も風が吹いた。しかし、いくら粧っても小沢と共産党の“背後霊”が見える候補に風が吹くとは思えない。自民党が危機感を募らせれば、勝てる勝負にもなり得る。それにかねてから述べているように、首相・安倍晋三が衆参ダブル選挙を選択すれば、野党の選挙協力が衆参でねじれを生じさせ、与党が勝つ公算が強い。そこにようやく気付いたか岡田が、18日、安倍が1月4日通常国会を召集することを決めたことについて「来年の衆参両院ダブル選挙の可能性を残すなど、いろいろなことを考えて判断したのだろう」との見方を示している。小沢と共産党の「危うい関係」が、幻に終わる可能性の方が大きいように見える。しょせんは砂上の楼閣を築いているのだろう。
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