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2015-11-14 00:00
「劉論文」から読み解く中国の国家戦略
倉西 雅子
政治学者
最近、中国人民解放軍の上将にして習主席側近とされる劉亜洲国防大学政治委員が、人民ネットなどで日中関係に関する論文を発表したそうです。中国にしては珍しく忌憚なき見解が綴られており、「劉論文」は、中国の国家戦略を知る手掛かりとなりそうです。
「劉論文」から読み解くことができる第一の点は、中国は、本気で尖閣諸島における武力行使を計画していたことです。当論文が、中国国内で驚きを以って迎えられたのは、「尖閣問題で日中衝突なら退路はない」と述べ、敗戦による一党独裁体制崩壊の怖れから、従来の「武力衝突も辞さず」の方針を転換したからです。この転換は、日本国内の左翼勢力が懸命に否定してきた中国の脅威、即ち、「尖閣諸島侵略計画」が、国家戦略上のシナリオとして実在していたことを裏付けてもいます。
第二の点は、武力衝突で勝利しても、中国が、尖閣諸島の正当な領有権を得ることは出来ないことを自覚していることです。「劉論文」では、「日本が負けても、尖閣諸島の実効支配の主導権を中国に渡すだけで実質的な損失はほとんどない」とする見解を示しています。つまり、中国は、尖閣諸島問題がいわば「竹島問題化」すると予測しており、武力占領後も、日中間の紛争が継続すると見ているのです。ある意味、この認識は、中国側が、国際法上において法的な正当性が認められない限り、尖閣諸島の領有権は確立しないことを認めたことを意味します。その一方で、尖閣諸島を武力で奪取することが、日本国に対する「侵略」に当たるとする認識が欠如していますので、日本国政府は、尖閣諸島領有の正当性をより強く、かつ、明確に中国、並びに、国際社会に対してアピールする必要があります。第三に「劉論文」が示す国家戦略は、中国が日本包囲網の形成を試みようとしていることです。劉氏は、対日政策として、対米関係の改善や韓国・台湾との連携強化を提唱し、さらには、日本国内の親中勢力との協力にも言及しています。内外両面から日本国を包囲することで、日本国の動きを封じようとしているのです。日本国は、覇権を追及しているわけではありませんので、対日包囲網は、中国がアジアに覇権を打ち立てるための”抵抗者排除戦略”として理解できます。
「劉論文」は、尖閣諸島と南シナ海との二正面作戦を避け、当面は後者に集中したい習政権の意向を受けたものとする指摘もあるそうですが、南シナ海においても、上記の諸点については基本的に変わりはありません。否、第三の点からすれば、尖閣諸島での緊張緩和の演出で日米との関係改善を図り、フィリピンやベトナム等の抵抗を孤立化によって排除しようとする可能性もあります。油断は大敵であり、決して「劉論文」に安心してはならないと思うのです。
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