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2015-10-28 00:00
アメリカ、ロシア、そしてシリアの駆け引き
川上 高司
拓殖大学教授
9月28日の米露会談では、間違いなくシリア問題が話題になったはずである。その後のロシアの空爆を考えれば、この会談でプーチン大統領はオバマ大統領に空爆の件を話したに違いない。一方オバマ大統領も、手土産がなかったわけではない。アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、トルコ、サウジアラビア、カタール、ヨルダン、アラブ首長国連邦(UAE)の9カ国は、アサド大統領の6か月間の暫定政権を容認する、とプーチン大統領に伝えた。
会談ではロシア側の反応はなかった。だが、10月20日にアサド大統領がロシアを訪問し、プーチン大統領、ラブロフ外相らと会談したことから想像すると、ロシアはアサド大統領に暫定政権について話し、アサド大統領を説得しさらに暫定政権後のアサド大統領の立場について話を詰めたのではないだろうか。
米露はアサド大統領の進退をめぐって対立していた。アサド大統領の留任を求めるロシアと、退陣を求めるアメリカが互いに譲らず、そのため政治的な解決の糸口すら見いだせなかった。一方で台頭するISISの脅威、ヨーロッパに押し寄せる難民が国際問題となり政治的な解決が期待されるようになった。その妥協点が「アサド大統領による期限つき移行政権」である。シリアの周辺のスンニ派諸国、特にトルコやサウジアラビアがこれを容認したことで現実的な解決への糸口となるかもしれない。
では、その移行政権後のアサド大統領はどうなるのか。おそらく欧米諸国は「戦犯」として裁きたいと考えているだろう。そのような事態を避けたいアサド大統領にとっては、ロシアの力が必要である。アサド大統領が暫定政権を受け入れる対価としてどのような要求をプーチン大統領にするのか、その駆け引きの行方がシリア問題の政治的解決を左右する。今回のアサド大統領のロシア訪問は重要なターニングポイントとなる可能性は決して低くない。
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