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2015-10-22 00:00
(連載1)TPPにみる国益忘れた対米協調を憂う
田村 秀男
ジャーナリスト
日米主導で環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の大筋合意が成立したが、気掛かりな点がある。1985年9月の「プラザ合意」以来、日本は「対米協調」に引きずられ、自国の利益を後回しにしてきた。TPPでその愚を繰り返さないだろうか。
TPP大筋合意に、米国ではオバマ大統領が「中国のような国ではなく、われわれが世界経済のルールをつくる」と宣言した。一方、来秋の大統領選有力候補のクリントン前国務長官(民主党)は雇用、安全保障などへの「基準を満たさない」と批判、共和党の有力候補に浮上したトランプ氏も「米国ビジネスへの攻撃だ」と反対を明言した。国益意識丸出しだ。
日本では、自由な価値を共有する広大な経済圏を米国と組んでつくるという安倍晋三首相のロマンが強い説得力を発揮している。多数のメディアも、「開国」におびえる農業をシバキ上げて合理化や改革を厳しく求め、米自動車ビッグ3の主力収益源であるライトトラックへの25%の保護関税を30年もかけて撤廃する内容は無視と、米国に甘い。対米協調優先の考え方の背景には「中国の脅威」がある。ただ、異形の経済超大国・中国と対峙する日米の枠組みとしても、過大評価は禁物だ。TPPはあくまでも自由貿易圏ルールの拡大版であり、対中外交・安全保障への波及効果は未知数だ。
TPPは国際ルールの面で万能ではない。知的財産権保護や国有企業の既得権排除、相手国政府との投資紛争処理などは、党・政府指令がモノを言う中国との相性はよくないはずだ。だがアップル、IBM、デル、マイクロソフト、インテルなど米国を代表するハイテク企業は競い合うように対中投資を増やし、先端技術を国有企業に供与している。米企業は中国市場シェア欲しさの余り、情報技術(IT)の中国標準の普及に協力している。(つづく)
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