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2015-10-22 00:00
米艦船の中国人口島沖派遣が秒読み段階に
杉浦 正章
政治評論家
中国が埋め立てを進めている南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島に米艦船を派遣する「航行の自由」作戦が、秒読み段階に入った。中国の主張する「領海」12カイリ以内に米国は艦船と航空機を送り込み、軍事行動で「航行の自由」を確保する動きに出る。米国の方針内定は今年6月だが、この間オーストラリア、フィリピン、ベトナムなど周辺諸国は一致して米国支持に固まった。中国側がどう出るかが注目される。米中とも軍事的衝突は避けるものとみられるが、1962年のキューバ危機で米ソが対決して以来の海洋における大国対決の構図が鮮明となることは間違いない。なぜ米国が突然独自の軍事行動を起こさず、リークにリークを重ねて来たかと言えば、周辺国への配慮と軍事行動の国際的基盤固めがある。今回の軍事行動について米国は、戦略的な位置づけを第1に考え、それには周辺国の同調が不可欠と判断したのだ。リークの中でもとりわけ注目されたのは「2週間以内に踏み切る可能性がある」と報じた10月8日の英紙フィナンシャル・タイムズだ。米高官のリークによるものだが、2週間を経た現在いみじくも中国国家主席・習近平が訪英で大歓迎を受けている。
英紙へのリークは同盟国英国の中国資金欲しさの大接近をけん制したものでもあったことが分かる。これによって周辺諸国の動きが一段と早まった。米国の事前リーク作戦は、関係諸国の態勢固めへの布石でもあった。リークと直接的情報提供工作により米国は「航行の自由」作戦への布石を着々と打った。まず豪州とは米ボストンで、12、13両日、外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)を開催。4閣僚は共同声明を発表し、南シナ海・南沙諸島で岩礁埋め立てや建設工事などを進める中国に対し「強い懸念」を表明した。一方、直接埋め立ての影響を受けているフィリピン、ベトナムへの工作も欠かさず進めた。この結果、ベトナムのファム・ビン・ミン副首相兼外相とフィリピンのデルロサリオ外相は21日にハノイで会談し、南シナ海における航行の自由の保障が重要と確認するとともに、両国関係を「戦略的パートナー」へ格上げすることで合意した。
韓国に対してもオバマが16日の朴槿恵との会談後の記者会見で「中国が国際法や規範に従わない場合、韓国が反対の立場を示すよう期待する」と中韓接近を厳しくけん制。これを反映してか 韓国外務省報道官は20日「航行・上空飛行の自由を保障し、紛争につながりかねない行為を自制する必要がある」と、初めて対中批判と受け取れる発言をした。日本に対しては動きが目立っていないが、ここに来て米国家安全保障会議(NSC)のアジア上級部長・クリテンブリンクが20日 、首相補佐官・河井克行とワシントンで会談、米国の作戦について伝えた。内容は発表されていないが、ことは秒読み段階であり、詳細にわたる作戦規模と期日などを伝達したことは間違いあるまい。同盟国や周辺国への事前根回しで、米国は南シナ海で期せずして対中包囲網の結成に成功したことになる。これを背景に軍事的行動に出る態勢が固まった。
読売によると、米軍の作戦は人工島の12カイリ内で、〈1〉艦船による航行、〈2〉艦船による調査・訓練、〈3〉潜水艦による潜行航行、〈4〉軍用機による上空通過などが検討されているようだ。問題は、これに対して中国がどう出るかだが、艦船による追尾、進路妨害、強制排除などが考えられるという。しかし中国側でいきり立っているのは人民日報系の「環球時報」のみで、15日の社説では「中国は海空軍の準備を整え、米軍の挑発の程度に応じて必ず報復する」「中国の核心的利益である地域に米軍が入った場合は、人民解放軍が必ず出撃する」と勇ましい。確かに軍部が独走すればそうなる可能性はあるが、果たして習近平が“踏み切るか”と言えば、話は別だろう。共産党中央軍事委員会副主席・范長竜は北京での安全保障フォーラムで17日「軽々に武力に訴えることは決してしない」と沈静化に努めている。
武力衝突は避けるものとみられるが、最低限追尾くらいはするだろう。双方とも自制を働かせるとみられるが、米国防総省はぎりぎりの範囲で示威行動を展開し、「中国の敗北」を際だたせるものとみられる。したがって、南シナ海が一触即発的な状況になることは避けられまい。これを機に中国がスプラトリー環礁の軍事要塞化を断念することはまずないものとみられるが、一方で米軍の示威行動も常態化する可能性がある。まさに米中冷戦時代を象徴することになる。当然米国は、日本の海上自衛隊の参加を要請してくる可能性がある。
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