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2006-12-11 00:00
地方分権の確立とバランスシートの役割
四条秀雄
不動産業
経済社会を観察すると、その進化の方向は、調整主体としてのバランスシート(B/S)が各分野において確立されていく広がりにあるように見えます。国家経営→民間企業経営→地方自治体経営→個人経営と広がっていく傾向にあるようです。もちろん重層的な広がりですが。最初のB/Sは、イタリアにおいて航海の収支を認識するために考案されたものだといいますが、まさに事業の始まりと終わりの時間・間隔が引き延ばされていることを記述することに、B/Sの本質があります。その後、B/Sは航海にとどまらず、あらゆる時間間隔のある事業の記述認識の形式となっていきました。ある分野にB/Sが記述され、その変化が観察され制御される歴史の中で、その経済社会の調整の手法が蓄積されていきます。蓄積の無い社会は、一回性の変動を繰り返し続けることになるでしょう。
この観察が正しいとすれば、ある経済社会をより進化させたいと思うならば、その社会を観察してB/Sがまだ確立されていない分野を探し出し、確立するための政策を実施すれば良いことになります。この観点から各国経済社会を評価すると、やはりアングロサクソン系国家が一番進んでいるように思えます。
ただし、アングロ・サクソン系の国家は、調整の時間設定が短いので、社会の構成員が変化についていけない傾向があるようにも見えます。中国については、民間部門のB/S意識すら怪しいことが分かりますし、そのために現在起きている変化が一回性のものだと予想できます。日本については、公共部門全体がアングロ・サクソン系国家に比べて遥かに遅れていることが分かります。また個人経営の遅れは、サラ金の経済的合理性を有名無実化させるでしょう。かえってグラミン銀行の方が個人経営の点で優れています。
そういうわけで、日本経済の課題の一つは地方分権の確立であることは確からしいように思えます。では、日本の地方自治はどのように確立されていくべきでしょうか?それには、三つの関係を捉えることが必要だと思います。つまり、中央と地方、地方と地方、中央と道州の三つの関係です。それから、ベースには、自治体B/Sの形成と運用と情報公開の広がりが必要でしょう。この三つの関係は、現在から将来の制度への移行の三段階に対応し、適当な実践ケースで現実化するのではないかと思います。まず、第一段階として、中央と地方の関係が、中央官庁と北海道の間で再編されるでしょう。そして、第二段階として、地方と地方の関係が、九州の各県間で道州制九州の形成プロセスとして実践されるでしょう。最後に、第三段階として、前二段階の経験を基礎にして、道州制の全面化実施されることになるでしょう。そして、全ての過程において地方自治体のB/Sが明確に意識され、全ての変動がその上で記述され、公開される様になるべきでしょう。これによって、日本は企業と自治体の二つの調整主体を獲得し、少子高齢化や安全保障などの外部環境への探索・適応を試みることが可能になります。
分権制度の再編確立でもうひとつ重要なことは、グローバリズムの過程で反作用として生まれた共産主義や過激思想運動などが近代社会の制度を利用しながら近代制度を破壊する行動をいかに抑止するのかということです。タウンミーティング問題や官庁からの秘密漏洩問題でも分かりますが、日本では大学教育を通じて非常に多くの共産主義シンパが生み出され、政治体制内に入り込んでしまっているので、事実上市民社会は機能しないか、政治利用されるため空洞化せざるを得ないと言う問題があります。世界的にみても、西側の生み出した価値や制度が過激派の盾になってしまっている状況の下で、冷戦期にはみられなかった秩序の崩壊空洞化が現象する結果となっています。これをどうするかというのは、日本と西側社会の課題となっていくでしょう。
日本が直面する環境変化の内のひとつである少子高齢化は、江戸時代にも経験しなかった対応困難な環境変化だと言えます。江戸時代には、通貨増による持続的なインフレ、米価に固定された公的財政制度、参勤交代・伊勢参り・金毘羅参りなどの移動の仕組みなどによって、その定常経済を維持する活力が生みだされてきましたが、今回はそれよりももっと厳しいようです。江戸時代は、今日のドル・ユーロ・その他の3極通貨体制に似ていて、幕府の金・関西の銀・諸藩の藩札の3層構造で、軍事的に優位にあるドルが持続的に価値を下げている点でもそっくりです。このような体制が定常化するためには、内部に移動の大きな仕掛けが必要でした。現在は江戸時代よりももっと「移動」に比重を置いた定常社会を作り出す必要があります。企業の売買市場であるM&A、不動産市場に流動性を与えるRIET、人材の流動化などは、すべてB/Sの増大ではなく、差替え・交換・流通を拡大するものです。資産価値が高くなるよりも、その資産が取引される市場の流動性が厚く大きく高く維持され決して枯れることがないように確信させることが重要になるでしょう。2006年の初頭に日本政府はヒルズ族の摘発に乗り出し、証券市場を一気に冷え込ませましたが、果たしてこれが正しかったのか疑問です。証券市場は、成熟した経済の活力である「移動」の心臓部であり、IT産業も事実上その派生産業です。PCはパチンコ台のようなものであって、証券市場が活況であるほどIT産業は拡大します。何百万の日本人が毎日何時間か何も考えることも無くパチンコ台の前に座ることよりは、ニートやフリーターの若者がパソコンを前に証券市場に熱中している方がマシでしょう。パチンコ攻略本が売れるより、経済の様々な情報が出版され、読まれる方が望ましいと思います。冷まし水を入れるタイミングではなく、本当はまだまだ熱を加え、風を吹き込みながら、叩いていくべきではなかったかと思います。
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