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2015-09-10 00:00
難民問題はシリア内戦問題を映す鏡
川上 高司
拓殖大学教授
ヨーロッパでは難民問題が深刻化している。71人の難民を載せたトラックがオーストリアの道路沿いで発見されたが、残念なことに彼らはすべて死亡していた。また、3才の幼児の遺体が海岸に打ち寄せられている写真が公開されると世界中から関心が寄せられ、ヨーロッパの難民問題は国際問題となった。難民はシリアやイラク、アフガニスタンから3000キロの旅をしてヨーロッパに辿り着く。ルートとしては北アフリカから地中海を渡ってスペインやイタリアへ行くルート、トルコからブルガリアへ渡るルート、トルコからギリシャのコス島へ渡りそこからセルビアやハンガリーへと陸路を行く3つが主流だ。最近ではコス島へ渡るルートが人気のようだ。
コス島には多いときは一晩で600人もの難民が上陸していた。7月だけでも5万人に達したという。破綻寸前のギリシャでは難民の受け入れすら出来ない状態で、ようやく辿り着いても彼らはほとんど野宿ですごさねばならなかった。難民の多くは以前は若い男性がほとんどだったが、最近は女性やこども、高齢者や妊婦など家族ぐるみでの避難が多いという。
難民が国境で警察と衝突したり密入国したりと問題となっているが、彼らが目指すのはドイツやスエーデンなどで、ギリシャやハンガリーやブルガリアなどは通過国に過ぎない。そのためかこれら通過国にとっては悪い話ばかりではないらしい。コス島と本土を結ぶフェリーは常に満席で思わぬところでビジネスが潤っている。難民はギリシャからは陸続きのマケドニアやハンガリーを通るが、移動手段のない難民をたとえばブダペストからウイーンまでは一人あたり300~400ユーロという高額な料金で車にのせ送り届けるビジネスが活況を帯びているという。
だが、彼らの未来は決して保証されているわけではない。根本的な問題であるシリア内戦が終わらなければ難民問題は終わらないのである。最近ではシリアのアサド政権は、反体制派と連立しISISに共働で立ち向かうことも可能だと示唆した。一方でフランスはISISへの空爆開始の準備を始め、イギリスも前向きである。武力でシリア内戦が解決しないことはこの3年間で証明されているのだが、さらに先の見えない混沌へと突き進むとしたらさらに難民はヨーロッパを目指して増え続けることになる。イランとの宥和路線を固めロシアとも関係の改善を目指すアメリカは今こそ、外交の主導権を発揮するべきだろう。
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