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2015-08-17 00:00
崩壊する中国“成長の方程式”
田村 秀男
ジャーナリスト
中国では不動産市況の低迷や景気の停滞を受けて、流入していた投機資金などが逃げている。資本逃避が目立ち始めたのは昨年秋からで、習近平政権は株価を押し上げることで、資金をつなぎ止めようとしたが、株価暴落でそのもくろみがつぶれた。景気てこ入れのためには、大幅な金融緩和と人民元安誘導しかないが、そうすると資金流出がさらに加速する。設立を急いでいるアジアインフラ投資銀行(AIIB)などを通じて、海外からの借り入れを増やさざるをえない。
昨年後半以降の中国の外貨準備(外準)と株価の推移をみると、外準のピークは昨年6月で3兆9932億ドル(約495兆円)と4兆ドルを目前にしたが、9月から急減し始めた。今年に入って、前年比の減少幅は大きく増え、1月は531億ドル減だったのが、6月は2993億ドル減を記録した。日米欧の場合は通常、外準は自国通貨が暴落するなどの非常時に備えるためで、大規模である必要は必ずしもない。しかし、中国の場合、特別の意味がある。中央銀行である中国人民銀行は流入する外貨を買い上げて外準とし、その額を基準にして通貨人民元を発行し、その元資金を商業銀行に供給している。人民銀行はこの6月現在、元資金供給残高(マネタリーベース)の92%相当の外貨資産を保有しているが、2005年から12年まではその比率は100%を超えていた。
外貨資産の大半はドルであり、残りはドルと交換できる国際通貨のユーロや円などである。つまり元は事実上、ドルの裏付けがあるという意味での信用を獲得し、増発が可能になった。08年9月のリーマン・ショック後、米連邦準備制度理事会(FRB)はドル資金を大量発行する量的緩和政策に踏み切ったが、米国からあふれ出たドル資金は中国に大量流入し、人民銀行はそれを吸い上げることにより、やすやすと元資金を大量増発できた。元資金は国有商業銀行を通じて不動産開発投資用に振り向けられ、不動産ブームを支えた。中国経済は投資主導で二ケタ台の経済成長に回帰し、リーマン後の世界でいち早くショックから立ち直った。10年にはデフレ不況が深刻化する日本の国内総生産(GDP)を抜き去って、米国に次ぐ経済超大国となった。
中国の成長モデルはいわば豊富な外準によって支えられてきたわけだが、その外準が増えずに急速に減少することで、成長資金を供給する方程式が成り立たなくなった。停滞感が強まる景気の刺激に向け、人民銀行はもっと大量の元資金を発行する必要があるが、人民銀行の外貨資産は外準の減少を反映して減り始めている。しかも、米国は昨年秋に量的緩和政策を打ち止めし、今年秋には利上げに踏み切る見通しだ。それを受けて、外に流れたドル資金は米国に還流する。人民銀行がドル基準を放棄すれば、元の信用が揺らぎ、資本逃避に拍車がかかる恐れが十分だ。
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