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2015-06-30 00:00
上海株暴落のウラに「人民元国際化」
田村 秀男
ジャーナリスト
「ストレスで心臓がおかしくなった投資家のみなさん、ご自分の心電図を株価のチャートと混同しないように」。個人投資家が2億人を超えるとされる中国では、上海株価が急落を続けた先週、中国語のウェブサイトでブラック・ジョークが乱れ飛んだ。上海株価は1年間で2倍以上も急騰、6月12日に平均株価が最高値をつけた後は真っ逆さまに落下した。上海の市場関係者の多くは、「急激に上がりすぎたあとの調整」とする見方のようだが、甘すぎる。
中国の外貨準備と上海総合株価指数の推移を追うと、外準が急減するのとは逆に株価が高騰してきた様子がよくわかる。外準の減少の要因は、中国企業の対外投資の増加ばかりではない。不動産市況の下落や国内景気の低迷によって海外からの対中投資が落ち込んでいることや、習近平国家主席による不正蓄財取り締まりを避けようとする党関係者が資産を海外に逃避させる動きも影響している。中国の国際収支統計から推計すると、合法、非合法を含めた中国からの資金流出は、四半期ベースでみて、昨年6~9月960億ドル(約11兆9000億円)以上、10~12月1200億ドル強となり、今年1~3月にはさらに加速し1900億ドルを超えた。中国は昨年8月には4兆ドルまで迫った外準は3月までに2400億ドル近く減った。
この分だと、外準を「見せ金」にした中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)への信用が揺らぐ。中国自体、国内は資金不足に陥り、国際金融市場からの借り入れを大幅に増やさざるをえない。窮地に立つ習近平指導部が考え出したのが、上海市場への外国人投資家の呼び込みだ。昨年11月には上海と香港の株式の相互取引を始めた。香港を経由することで、外国人が初めて中国政府の認可なしに上海株に投資できるようにした。外国人投資解禁に加えて中国人民銀行による利下げ効果が国内の個人投資家の投資意欲を喚起し、上海株価は上昇気流に乗ったように見えたが、長続きはしない。香港経由の外国人投資は出入りが目まぐるしい。
6月18日付の米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)によると、6月3日までの1週間で中国証券市場に外資が73億ドル流入、しかし、翌週は68億ドル流出したという。相場が上がりすぎとみるや、いち早く撤収する外資に上海市場が翻弄されている。にもかかわらず、習政権は資本流出入規制を緩和せざるをえない。国際通貨基金(IMF)による人民元の国際準備通貨認定の条件になるからだ。上海株暴落騒ぎは図らずも、北京に難題を突きつけたことになる。外資に門戸を開放すれば、上海市場は大きく揺れるばかりか、資本逃避に加速がかかる恐れがある。さりとて、外資を厳しく規制し続けると人民元の国際通貨化は先延ばしになり、人民元で対外影響力を拡張する思惑が外れる。要は、中国金融は国際化に値しないだけのことだ。
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