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2015-06-04 00:00
サウジアラビアにおける宗派闘争の不安
川上 高司
拓殖大学教授
5月29日、サウジアラビアのペルシャ湾に臨む街のシーア派モスクでテロが発生した。犠牲者は3名と少ないが、その前週の22日に発生したシーア派モスクを狙ったテロでは、21名が犠牲になっている。この2回のテロは、いずれもイスラム国の犯行声明が出されている。サウジアラビアでは、イスラム国で戦闘経験を積んだ若者が帰国して国内でテロを起こすことを懸念しているが、まさにその懸念が現実のものとなりつつあるようだ。
サウジアラビアにはおよそ300万人、10~15%のシーア派が居住している。主にペルシャ湾岸地域とイエメンとの国境付近に集中している。彼らは厳格なスンニ派が主流のサウジアラビアでは異端視され、長年差別されてきた。その不満が時折噴出し、前国王はシーア派とスンニ派の宥和に気を遣ってきた。
だが、イスラム国は容赦なくそこにつけ込んできた。シーア派へのテロを繰り返せばやがてシーア派の怒りは頂点に達し、政府やスンニ派への闘争が始まる。シリアで起こっているような熾烈な宗派闘争へと発展する可能性は決してゼロではない。
サウジ政府としては、シリアやイラク、イエメンで起こっているような宗派闘争が絡む内戦は断固として避けたい事態である。そのため治安を強化し、イスラム国と関係ありそうな人物の摘発に躍起になっている。サウジアラビアは多くの外国企業が国内で操業している。世界最大の産油国である同国の政情が不安定になれば、世界的な影響は避けられない。アメリカとの関係が険悪な今、アメリカの支援は望めない。自力でテロと向き合っていかなくてはならない新国王の直面する問題はあまりにも深刻である。
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