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2015-06-02 00:00
安保論議は「高村節」が分かりやすい
杉浦 正章
政治評論家
昔から自民党副総裁には優秀なキャッチコピー・メーカーが多いが、その代表格は川島正次郎と椎名悦三郎だろう。川島は「政界一寸先は闇」と今でも政局記事には欠かせない発言をした。自派の荒舩清十郎が急行を選挙区に止めて運輸相辞任となったときは、「やはり野に置けレンゲ草」と述べたものだ。椎名は外相時代の国会答弁で「アメリカは番犬様」と述べて爆笑を買った。副総裁になって、椎名裁定で三木武夫を首相に指名したが、その後「産みの親だが、育てるとは言ったことはない」と述べて、「三木降ろし」に回ったことは有名。長い間キャッチコピーの名人は現れていなかったが、安保法制をめぐる発言では、副総裁・高村正彦の発言が一番分かりやすい。とかく難解な言葉が飛び交いがちだが「アメリカは世界の警察官疲れをしている」「台風は止められないが、侵略は抑止できる」などの言葉は、すっとふに落ちるキャッチコピーだ。1年にわたり与党協議の調整役であっただけに、安保法制を十分理解した上で、ポイントを平易な言葉で突いているのだ。首相・安倍晋三の総裁任期についてもTBSで「どんなに短くても後3年」だそうだ。ひょっとしたら2期6年までとなっている自民党総裁の任期を「3期9年」まで延長することを考えているのかも知れない。
総裁選はともかくとして、今国会で展開している論議は、よほど安全保障問題に精通した人でないと難解で分かりにくい。ところが高村解説だとすぐに分かる。まず「まるまる論」だ。高村は「集団的自衛権の行使と言っても、国連が世界に認めているまるまるの集団的自衛権の行使をやろうというのではない。野党はまるまるだと攻めたてているが、日本防衛の目的があり、新3要件に合致する場合にのみ発動する限られた限られた集団的自衛権の行使だ」と説明する。次ぎに「伝家の宝刀論」。「集団的自衛権の行使は伝家の宝刀だ。抜くぞ、と見せかけて抜かないところに抑止力が生じる」。たしかに安保法制は攻撃的な性格のものではなく、受動的な性格が濃厚であり、野党の言う「世界中で戦争をする国になる」こととは、ほど遠い。第一そんな国力は今米国しかない。それも弱ってきている。その辺を高村は「アメリカは、かつては基地を提供してくれれば、後は全部任せてくれという態度であった。今でも圧倒的に強いが、世界の警察官疲れをしている」と説明する。野党は「アメリカの肩代わりをすることになる」と追及するが、高村は「外形的には米国がやられているのを日本が守れば、集団的自衛権の行使と言われざるを得ないが、あくまで自国防衛の目的を伴った限定的な行使だ」と述べる。野党の「世界の何処までもアメリカに付いていって戦争をする」との主張を全面的に否定しているのだ。
次ぎに安倍が海外派兵の例外として、ホルムズ海峡の機雷除去を挙げていることについて「ペルシャ湾での機雷掃海ぐらいが後方支援の限界だ。その他に国民の生命を根底から覆される明白な危険が想定できない」と述べている。機雷掃海が限界なら、イランも近ごろは軟化しており、予見しうる将来において機雷が撒かれる事態は想定できまい。その意味では机上の議論に過ぎない。また野党に「アメリカの戦争に巻き込まれる」論があることについて、高村は「まず安保改定反対という人が巻き込まれると言った。次ぎに周辺事態立法の時も巻き込まれると言い、PKOを派遣する際も巻き込まれると主張した。しかし、かえって抑止が利いて、日本は70年間平和だ。巻き込まれる危険と抑止力で未然に防止する効果と、どっちが大きいかは火を見るより明らか。台風は止められないが、侵略は抑止できる」と反論。
確かに国会論議を見ると野党は勉強不足で古くてさび付いた安保論争を展開している。社会党が社民党へと「極小化」してしまったことを見ても、自民党政権の判断は正しかったことを物語る。焦点の自衛隊員のリスクについて、高村は「まさに国民のリスクを減らすために安保法制を作った。有事の際に自衛官が一番のリスクを負うのが当然だが、そのリスクを減らすためにいろいろな工夫をしている。木を見て森も見れば、紛争を未然に防げればその自衛官のリスクですら減る。」とのべた。極めて妥当な発言だ。こうして高村の平易な言葉で核心を突く発言が、国会論戦の側面から重要な役割をはたしており、今後もTVなどに積極的に出て「高村節」で国民に説明するのが野党や一部の「専門家」がばらまいている、虚飾のレッテル張りを打ち消す為に最良の方策だ。
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