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2015-06-01 00:00
上海株価に充満する「暴落エネルギー」
田村 秀男
ジャーナリスト
以前、「上海株価がバブル同然」と断定したことがあるが、何人かの専門家も同様の見解をネット上で流した。それらを尻目に、上海株総合指数(1990年12月=100)は上昇を続け、1年前の2・5倍の5000台に乗る勢いだ。もはやバブル崩壊の危険水域に到達したようだ。上海株総合指数は、2007年10月には最高値5900台に達したが、1年間で3倍という上昇速度だった。当時の胡錦濤政権の株式投資奨励策を受けて、党幹部や国有企業がまず動き、続いて大衆が預金から一斉に株式投資に殺到するありさまだった。最高値のあとは崖を転げ落ちるように落下し、リーマンショック後の08年10月には1700台に下がった。
党中央は株式市場てこ入れのため、10年3月に少ない手元資金で多額の投資を可能にする信用取引を解禁したが、暴落に懲りた個人投資家は株式市場には戻らず、多くは不動産に投資先を転換した。不動産ブームは加熱し、バブルと化し、13年後半からは不動産相場が下落基調に転じた。リーマン後の景気回復を牽引してきた不動産開発投資は不振に陥り、14年からは景気の下降に拍車がかかり現在に至る。深刻なのは景気ばかりではない。14年後半から不動産部門などへの投機資金の対外流出が加速し、外貨準備は年間で3000億ドル(約36兆円)のペースで減りつつある。国内の資金不足を補うため、海外からの銀行借り入れ、債券発行は年間で3000億ドルに上る。今や中国は、米国をしのぐ世界最大の国際金融市場の借り手である。
習近平政権がとったのは、利下げによる株式市場のてこ入れである。利下げの理由は表向き、国内景気の刺激だが、富裕層は国内産品を買わずに、日本など海外に出向いて「爆買い」に興じる具合だし、バブル崩壊不安に包まれた不動産に投資する気配はない。唯一、国内の余剰資金が向かうのは株式市場しかない。党中央は利下げが株価引き上げの狙いであるとのメッセージを投資家に送っている。公務員や国有企業の党員たちは、株価が上がると読み、株式相場は昨秋の利下げを機に高騰し始めた。株価上昇が息切れし始めると、中国人民銀行が党中央の指示を受けて利下げする。すると株価は再び上昇基調に転じるという具合である。ところが、上海株価と実体景気は「逆相関」、つまり離反する。
景気指標の中でも、李克強首相が最も信頼している鉄道貨物輸送量を株価と対比させながら推移を追うと、まさに不況の中の株式ブームである。おまけに、利下げで下落するはずの人民元の対ドル相場も市場介入によって押し上げている。こうして国内外の投機資金を株式市場に引きつけるのだが、円安を受けた日本や景気回復基調が定着した米国の株高とはわけが違う。株価上昇とともに市場には暴落エネルギーが充満するのだが、習政権は株高に賭けるしかないのだろう。
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