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2015-05-28 00:00
「Hopeless(希望がない)」がテロの源
川上 高司
拓殖大学教授
5月12日、アメリカニューヨークタイムズ誌に、カタール国王の寄稿文が掲載された。タイトルはまさに「オバマ大統領へ」である。その中で国王はイスラムとテロリズムについて言及している。
イスラム教徒として、イスラム世界の内側からのメッセージは真摯に心に響く。国王は、昨今のテロリズムは世界で言われるようにイスラム教に起因するのではない、テロリズムは「Hopeless(希望がない)」であることに起因すると述べた。シリアやイラク内戦で発生した難民キャンプに蔓延するhopelessこそが、テロリズムの源となっている。リビアやイエメンでも内戦が拡大しつつある今、さらなるhopelessがさらなるテロを生む悪循環に陥っているというのだ。
アメリカの対テロ対策の専門家であり、元CIAのブルース・リードルもやはり難民キャンプで生まれる過激思想に警鐘を鳴らしている。リードルによれば、難民キャンプに暮らす若者たちの間に広がる絶望感と強い反欧米感情をアルカイーダの勧誘が吸い寄せているのだという。だからジハードに参戦する若者が後を絶たないのだ。イスラム国(IS)は、そもそも2003年にアメリカがイラクに侵攻した際、国を追われたイラク軍の将校がいつか母国へ戻ろうと機会を伺っていたことに起因する。追放された絶望感と反米感情がその源なのである。だからISは欧米がひいた国境線を否定して、新たなイスラム国家を目指している。
このhopelessからの脱却に、アメリカだけでなくイスラム諸国自らが取り組んでいかなくてはならない。それは、より深くより長い時間をかけてより戦略的なアプローチが必要となる。空爆では解決しないとカタール国王はメッセージを綴る。国際社会にはそもそもイスラム教への理解が必要である。そしてカタール国王が述べたようにテロリズムとイスラム教を切り離し、イスラム世界の内外からの努力によってテロを根絶していかなければならない。その覚悟が求められている。
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