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2015-05-21 00:00
岡田提起の「自衛隊リスク論争」は安倍の勝ち
杉浦 正章
政治評論家
党首討論を聞いて、野党は戦後一貫してその存在のより所としてきた「一国平和主義」の主張に依然として全面的に寄りかかっている、ということが改めて鮮明になった。戦後70年たって国際環境とりわけ日本を取り巻く安全保障情勢が激変している現実をあえて無視して、首相・安倍晋三との論争に挑んでいる。国民の不安をいたずらに煽る戦術である。これでは議論がかみ合わずに平行線をたどるのも無理はない。安倍は国際環境の変化について「北朝鮮は数百発の弾道ミサイルの配備をしていて、核開発も進んでいる。この10年間で自衛隊のスクランブルは7倍に増えた。こういう現実を踏まえ、立法府の責任とは何かを考え、決めるべきは決めていく、やるべき立法は作っていく姿勢が大切だ」と、北の核ミサイルと中国の領空侵犯などを挙げた。
民主党代表・岡田克也の質問にはこうした観点が全く欠如しており、基調はもっぱら「アメリカの戦争に巻き込まれる」論を展開した。米国の戦争に巻き込まれるという主張は、社会党や共産党が安保条約改定に際して述べてきた主張だが、改定から半世紀を経ても巻き込まれていない現実をどう見るか、という視点がない。それどころか岡田が強調したのは「自衛隊のリスク」論である。自衛隊のリスクはなぜ発生するかを考えれば、国際環境の変化によって生ずるであろう国民のリスクがあるからである。北の核ミサイル開発や東・南シナ海で発生している中国の覇権行動によって、集団的自衛権を行使する際の「武力行使の3要件」の核心部分である「国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」からこそ、自衛隊のリスクが生じるのである。
岡田は国民へのリスクはどうでもよくて、自衛隊員のリスクの方が大事なのだろうか。これこそ平和は天から降ってくる社会党の思想をそのまま受け継いだものであろう。戦後70年の平和が保たれてきた理由について、岡田が「日米同盟の抑止力と憲法9条による海外での武力行使の禁止」を挙げたのに対して、安倍は「日米同盟と自衛隊の存在だ」と述べた。確かに憲法9条は自己抑止力として作用するが、それだけで国の安全が図れるかと言えば世界の常識から全く逸脱する。軍事力があってこそ抑止が効力を発揮するのであって、自衛隊の存在を挙げた安倍の見解の方が説得力がある。
言うまでもなく、自衛隊員は入隊に当たって、国家存亡の有事に戦うことを宣誓しているのである。岡田は「どう見ても、自衛隊の活動範囲は飛躍的に広がる。戦闘に巻き込まれるリスクも飛躍的に高まる」と主張するが、他国による侵略や核ミサイル攻撃という極限状態において、自衛隊がリスクを冒さなければ誰が国防の責務をになうのか。国会はここの本音部分に踏み込んだ議論を避けるべきではない。山本五十六は「百年兵を養うは、ただ平和を守るためである」と述べているが、国家存亡の危機のためであることは、戦前であろうと、戦後であろうと違わない。違うのは日本軍国主義のために軍隊を使うか、安倍のように国防のための「必要最小限の実力行使」のために使うかであり、これは民主主義国家においては国民の選択に委ねられる。軍国主義者を国民が選ぶか選ばないかの問題でもある。安倍は現場の判断でリスクを回避できることや、なるべく戦闘に巻き込まれない地域を選ぶとしているが、ことは国家の危機であり、安倍の見解の方が正しい。
その意味から言えば、岡田の「アメリカの戦争に巻き込まれる」との観点は、レッテル張りと反自民プロパガンダと言うしかない。安倍は「海外派兵は行わない」と言明、過去にも「湾岸戦争やイラク戦争には自衛隊を派遣しない」と繰り返しているのであり、この言葉を信用するしかあるまい。噴飯物は岡田が「他国の領土で戦争はしないと法律に書くべきだ」と主張したことである。もとより安保法制は「抑止力」に主眼を置いたものであり、抑止のための後方支援で他国の領土、領空、領海に踏み込まざるを得ないことも否定出来ない。安倍が例外的にホルムズ海峡での機雷除去への積極姿勢を示したのも、イランの領海での機雷除去が石油確保の生命線であるからに他ならない。安倍が自衛権行使の3要件を厳格に適用すると述べているのだから、世界の常識から見ても極めて限定的な変化である。主要国ではただ一国、遅まきながら慎ましい集団的自衛権の行使に踏み込むのであり、それは他国による攻撃が前提としてあるからだ。安保法制の基本思想は「受け身」であり「攻撃」ではない。総じて野党の論議は机上の空論的であり、これが安保法制論議の幕開けかと思うと、先が思いやられる。机上の空論で神学論争を繰り返しても、喜ぶのは「他国」ばかりであることに気付くべきだ。
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