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2015-04-28 00:00
「国際通貨人民元」という虚構にだまされるな
田村 秀男
ジャーナリスト
筆者が再三にわたって警告してきた通り、中国は人民元を「国際通貨」として認定するよう国際通貨基金(IMF)に求めてきた。習近平国家主席はここにきて、対IMF工作を本格化させている。世界の代表的な国際通貨は、IMF特別引き出し権(SDR)を構成するドル、ユーロ、円、ポンドの4大通貨で、その一角に食い込めば、国際的な準備通貨としての座を獲得できる。秋のIMF理事会は、5年に一度のSDR構成通貨見直しの結論を出す。IMFによる人民元の国際通貨認定は、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)や習主席がやはり主唱する新シルクロード経済圏(一帯一路)の成否に関わる。
AIIBは世界銀行やアジア開発銀行(ADB)と同様、主として国際金融市場からドル資金を調達するのだが、世界最大の貸し手である日本とドル市場を支配する米国がAIIBに参加しないと、信用力に欠ける。元が国際通貨になれば、元をドル、ユーロ、円などと自由に交換できるので、中国が元資金を融資しやすくなる。借り手も元資金を大歓迎する。ユーラシア大陸や南アジア、中東、東アフリカ、欧州までのインフラを結ぶ一帯一路圏も、一挙に広大な人民元経済圏になりうる。中国は軍港や石油などの戦略資源も元を刷れば確保できる。元の国際通貨化はまさしく、軍事・外交を含む中国の膨張政策を担うわけである。差し当たりは、IMF加盟国を説き伏せなければならない。
そんな対IMF工作を担うのは、周小川・中国人民銀行総裁(67)である。2003年に就任して以来12年目で、65歳定年を過ぎても習主席は続投させている。周氏には、筆者もかなり前だが国際会議で同席し議論したことがあるが、まさに黒を白と言いくるめる中国伝統の口舌の徒そのものだった。英語もうまく、米欧の中央銀行首脳とはすぐに打ち解ける。そんな具合だから、胡錦濤政権時代では、北京内部で「アメリカの回し者」と疑いの目で見られるほどだったが、習主席にとってみれば格好の対外工作者である。
先週、ワシントンでのIMF・世銀合同開発委員会の舞台裏では、周総裁が元のSDR認定に向けIMFや各国代表に盛んに働き掛けた。元のSDR通貨化を許してしまうようだと、日本は経済のみならず外交・安全保障面でも中国に圧倒されてしまう。ドル覇権に挑戦されることになる米国も警戒するはずだが、周氏は巧妙にワシントンの説得にかかるだろう。元はドルを補完できるので、むしろ米国の利益になる、という具合に、である。頼りないのは日本の財務官僚である。かれらは「人民元のSDR通貨化は時間の問題」というラガルドIMF専務理事の言葉にうなずくだけで、米国の出方を待ち、今回は5年先送りできればしめたものという具合だ。
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