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2015-04-24 00:00
こわもて二階の豹変で安倍再選不動の流れ
杉浦 正章
政治評論家
メディアで自民党総務会長・二階俊博の「存在感」の論議が盛んだ。安倍一強の中で、富士山のまわりの山が存在感を示すと言っても余り説得力はないが、若い記者には高く見えるのだろう。確かに昔のように自民党内は実力者が群雄割拠する時代ではない。小選挙区制がなせる業で、政治家が小粒になった。そうした中では二階が大きく見えてもおかしくないが、その二階が最近“好好爺”化しているかのようだ。御年76歳で好好爺になってもいい歳だが、雑誌やテレビ番組で安倍再選の支持を表明しているのだ。それにしても昔の政治記者は担当の政治家が、総裁選で誰を支持するかは血眼になって報道戦を展開したものだが、今は「雑誌が報じた」と書いて、まるで他人事のようである。こちらの方も迫力を欠くこと著しい。
二階は、かつて韓国の中央日報までが「安倍首相の最も恐れる政治家」と報じ、事実国内でも一時は「二階こわもて論」が盛んだった。一年前までは「誰かのご機嫌を取っても仕方がない、政治は真剣勝負だ」と漏らして“すごんで”いたが、今年に入って徐々に姿勢が軟化。ついに9月の総裁選挙まで半年となる昨今は、幹事長・谷垣禎一や政調会長・稲田朋美に負けじとばかりに安倍再選支持だ。だが谷垣や稲田と異なり、こわもてが豹変した意義は大きい。党内に「二階さんまで支持した」と流れが出来てしまっているからだ。テレビの時事放談で「今のところ安倍総理は総裁の条件を十分兼ね備えている立派な総裁として認識されている。慌ててここでピッチャーを代える必要はないと思う」と再選支持を表明。おまけに「総裁選を戦った方がいいという人もいるが、そういう人は総裁選がなければ仕事がなくなってしまう人。おもしろがってやるものではなく、命がけの仕事だ」と党内をけん制までしてみせた。「出馬する人は1月には手を挙げていないと駄目」なのだそうだ。
そういえばただ一人対立候補になり得ると目される地方創生相・石破茂は1月に「全力で安倍さんを支える。俺が俺がと言う気持ちはない」といち早く不出馬を表明している。二階は石破が立つような状況なら、安倍支持には動かなかったかもしれないが、立たないのでは動きようがないと思った可能性が高い。しかし、安倍は驚いたことに、「石破立つべし」論である。安倍は石破の側近で自らの座禅の仲間である元金融相・山本祐二に「最初から出ないと決めつけないで欲しい。自民党に活力があるのは切磋琢磨があるからだ」と漏らしている。対立候補に「立て」というのは、大変な自信と言うしかない。こうして自民党内の空気は安倍の再選は間違いない情勢となったが、総裁選というのは、ただ目立ちたい一心で手を挙げる人物が出てくることもある。しかし今の情勢で20人の推薦人が集まるかどうかが問題だ。あえて冷や飯覚悟で反旗を翻す決断がいるからだ。無投票再選もあり得るが、過去にも無投票再選の例は結構ある。鈴木善幸、中曽根康弘、海部俊樹、橋本龍太郎、小泉純一郎が無投票で再選されている。安倍がそうなれば、2001年の小泉再選以来となる。政局は安保法制、普天間移設など波乱要素があり、まだ即断は出来ないが、おおむね流れは定まったと言える。
安倍にしてみれば、端倪(たんげい)すべからざる二階だが、ひとたび味方につければ、自らの苦手な部分をかなり補える。二階は旧田中派出身の道路族であり、育ちの良い安倍と異なり「族議員」の代表格だ。荒っぽい仕事での党内の押さえにはもってこいだ。公明党の中央幹事会会長・漆原良夫とは太いパイプでつながっている。「週に一回は必ず会っている」という。かつて大島理森と漆原良夫は「悪代官と越後屋」に例えられたが、いまは二階が和歌山県出身であることから「紀伊國屋と越後屋」の仲だそうだ。安倍と異なり主義主張はリベラル系だ。中韓両国とも太いパイプがあり、去る2月には財界人や地方自治体の関係者ら約1400人を同行させて訪韓。5月には3500人規模の財界人らとともに訪中する。安倍にしてみれば二階は「両刃の剣」ではあるが、問題は使いようであろう。
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