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2015-04-22 00:00
韓国“対中実利外交”は大失敗に終わる
田村 秀男
ジャーナリスト
韓国は、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の創立メンバーとなった。韓国はどうしてこうも中国に傾斜するのだろうか。そこで思い当たったのは、韓国の対外経済関係の変化である。韓国経済は、輸出が国内総生産(GDP)に占める比率が約5割になる。輸出のうち中国向けは25%、米国12%、日本は5%強という具合である。とすると、対中輸出はGDPの12%以上を占める。対中輸出が1割でも減ると、GDPは1%以上押し下げられる。もう一つ、韓国を悩ませているのは、円安である。アベノミクスで円安が進行するにつれて、韓国の輸出の伸びが下がり、今年に入ってからは前年比マイナスまで落ち込んでいる。輸出の増減率と円に対する韓国ウォンの相場の推移を対比させると、見事にトレンドが一致している。
これでは、朴槿恵大統領が安倍晋三首相に好感情を持たず、中国の習近平国家主席に卑屈なまでに気を使うのも無理はないとも思える。朴さんや韓国の産業界としては、中国とは何が何でも良好な関係を築きたい。そしてAIIBがスタートした後、アジアのインフラ投資プロジェクトを受注しよう、北朝鮮のインフラ投資が進めば、韓国企業が受注を独占しよう、と皮算用しているに違いない。習近平氏が先の海南島での国際会議で明らかにした「一帯一路」構想では、当面のアジアインフラ資金需要の76%は中国向けというのだから、韓国としてはAIIB即対中輸出増のチャンスととらえるわけだ。
韓国は、英国など欧州主要国と同じく、日米との結束よりも実利優先で行くのだが、そもそもAIIB参加は韓国にとっての収益機会になるのだろうか。中国主導のアジアのインフラ建設「一帯一路」の底流には、すべての道は北京に通じるという、中華思想がある。およそグローバル市場秩序にはそぐわない華夷(かい)秩序(中国の皇帝を頂点とする国際的な上下関係)に組み込まれても、儲かるのだろうか。インフラ建設の場合、価格面で日本より有利になると思われる韓国企業であっても、採算を度外視する中国企業にはかなわないだろう。仮に北朝鮮のインフラ開発が進むことになっても、中国企業が独り占めする可能性は十分ある。
北朝鮮の金正恩第1書記が、親中派の叔父、張成沢氏を国家反逆罪で処刑したのは2013年12月。以来、北京は北向けの原油輸出を差し止めて平壌に揺さぶりをかけ、張氏が健在なころに北朝鮮の開発利権を獲得した中国資本を守っている。中国自体、過剰設備、過剰人員を抱える一方で、資金の海外逃避の膨張で、年間数千億ドルの資金を借り入れている。中国はAIIB名義で借り入れ、インフラ・プロジェクトに国内の余剰を振り向けるというのが、真相だ。余計なお世話かもしれないが、韓国の対中実利外交の大誤算ぶりが見えるのだ。
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