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2006-11-22 00:00
APEC・FTAの実現可能性
木村 福成
慶應義塾大学経済学部教授
今月(2006年11月)のハノイAPECにおいてアメリカが検討を提案したAPEC・FTA(FTAAP)は、大きな波紋を呼んでいる。この問題は、APECの本来の理念との整合性、東アジア統合の動きとアメリカとの関係、WTOドーハ・ラウンドやEUとのリンク、アメリカの中間選挙結果の影響、来年7月に失効するTPA(Trade Promotion Authority)との関係、インドの処遇、それらを踏まえて日本のとるべき立場など、さまざまな角度から議論しうる。しかし、ここではとりあえず、その実現可能性についての私見を述べたい。
「参加国が21カ国・地域と多く、しかも中国、台湾、ロシアなど多様な国・地域を含んでいるところで、FTAを結ぶなどということは、非現実的である」あるいは、「レベルの低いFTAを作るということでは、USTRはアメリカ国内を説得できないだろう。この点はFTAAですでに懲りているはずである」などというのが、方々から聞こえてくる声である。しかし、FTAAPは本当に非現実的であろうか。
たとえば、アジア太平洋地域の(相対的)先進国が集まって、APEC全域に先行してpath-finderとして多国間FTAを結んでいく、といったシナリオが設定されたらどうなるだろうか。日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、アメリカ、メキシコといった域内OECD加盟国にシンガポールとチリを加えたFTAを考えてみると、もうすでにほとんどの2国間の組み合わせでFTAが締結されているか、もしくは交渉中となっていることがわかる。大幅に遅れているのは日本のみである。また、シンガポール、ブルネイ、ニュージーランド、チリから成るP4は、当初からアジア太平洋地域FTAの先導者となることを意図したものである。最終的にアジア太平洋地域全体へと向かうにしても、シークエンシングを弾力的に設計することを視野に入れると、FTAAPは大いに現実味を帯びてくる。
東アジア経済統合との関わりでアジア太平洋の枠組みをどのようにとらえるかは、本評議会でもさまざまなご意見の方たちがいらっしゃるだろう。しかし、日本がどのように行動するにせよ、アジア太平洋を単位とする統合努力も急速に進んでいく可能性が高いことは、よく認識すべきである。
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