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2015-04-08 00:00
北京のインフラ銀行の対北融資話とソウルの躁
田村 秀男
ジャーナリスト
韓国が1年間にわたる中国との折衝の結果、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を決めた。韓国メディアは「韓国企業がアジア地域のインフラ開発事業に参加する機会が大きく開かれた」(中央日報電子版3月30日付)と大はしゃぎである。つまり韓国は実利を優先したのだが、彼らにとって真っ先に考える実利先は北朝鮮である。ワシントンが中国主導のAIIBに反対してきたのは、米国主導のアジア金融秩序に中国が割り込んで主導権を奪い、アジアを分断する狙いがあると読むからで、とりわけ朝鮮半島情勢を考えると、韓国が中国側に走るのを阻止したかった。一方で中国側は韓国を引き寄せるのに熱心で、AIIBと韓国をめぐる米中の暗闘はすさまじかった。
2014年5月、訪韓した中国の王毅外相は朴槿恵大統領に対し、「7月初旬の習近平国家主席の訪韓時の中韓共同宣言文に『韓国がAIIBに加盟することにした』と明示してほしい」と要求した。さらに北京は6月初旬に訪中した韓国の副首相に念を押した。これに対し、米側は危機感を強め、C・アトキンソン米国国家安全保障会議(NSC)国際経済担当副補佐官が、6月初めに米国を訪問した韓国政府高官に、AIIBに参加しないよう、クギを刺した。「韓国がAIIBに参加するなら、米韓の信頼関係を壊す」とまで警告した。
米国の強硬姿勢を受けて、朴大統領も習主席との会談で「参加します」とは約束できなかった。「韓国は中国がAIIB設立を提起したことを称賛するが、中国と意思疎通を保ちたいと述べるにとどめた」(14年7月4日中国国営の新華社通信)というわけで、あとは水面下で中韓間のすり合わせが行われてきた。その中で、韓国側は「ソウルにAIIB本部設置という条件を提示した」(中央日報電子版14年7月14日付)という。中国が出資金の5割を出すというのに、ソウルに本部を、というのは、いかにも韓国らしい夜郎自大式発想だと思われがちだが、北京側はその言葉の裏を読み込んだに違いない。AIIBは朝鮮半島、つまり北朝鮮をカバーしろ、という意味だと。
中国は最後に「北朝鮮カード」を切った。3月27日の産経新聞ソウル支局藤本欣也記者電では、「韓国の企画財政省高官はAIIBの総会で認められれば北朝鮮にも投資可能だと打ち明けた」という。世界銀行やアジア開発銀行未加盟の国、つまり北朝鮮にはAIIB融資はできない決まりだが、中国が仕切る総会承認で可能にすると、北京は約束したのだ。AIIB参加決定を受け、韓国の経済団体は早速、共同声明を発表、「韓国企業がアジア社会基盤の建設に主導的に参加できる道が開かれた」と歓迎した。現代グループなど北朝鮮開発に賭けてきた韓国企業にとって、この「アジア」とは「北朝鮮」のことだ。北朝鮮に強硬姿勢を貫く日本と米国はAIIB問題でますます結束して対応せざるをえない。
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