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2015-03-05 00:00
根底から揺らぐ国際金融秩序
田村 秀男
ジャーナリスト
2月下旬は中国の旧正月休みで、この期間、ブランド物で着飾った中国人旅行者が東京・銀座に押し寄せた。デパートや高級ブランド店、電器ショップなどは人民元大歓迎だ。だが、通貨は国家そのもの。世界第2位の経済超大国として人民元攻勢を展開する習近平国家主席が、そんなことで満足するはずはない。人民元をドル、円、ユーロ並みの国際通貨にしようと、躍起になっている。
5年前、国際金融社会の総本山、国際通貨基金(IMF)は人民元を「自由利用可能通貨」として認めなかった。自由利用可能通貨となれば、元はIMFが持つ仮想通貨「SDR(特別引き出し権)」を構成する主要国際通貨の一角に組み込まれる。SDRは、現実には流通していないが各国の外貨準備用として使われる。現在、SDRはドル、ユーロ、円、ポンドの4大自由利用可能通貨で構成される。元が加わると、世界各国の通貨当局や中央銀行は元を外貨準備として持つようになり、元は国際決済用として一挙にグローバルに普及しよう。
IMFは、SDR構成通貨について5年ごとに見直す。そして今、元を自由利用可能通貨として認定するか、検討中だ。何しろ、中国の貿易規模は今や日本の3倍近い。東南アジアと韓国には人民元建て貿易決済が急速に普及し、「人民元経済圏」と化しつつある。日本の銀行や商社業界も元建てのビジネス取引を競い合うありさまだ。元建て決済の貿易額は2013年に円建て貿易を抜き、14年は円建ての2倍以上に膨れ上がった模様だ。元はSDR構成通貨中、円に代わってドル、ユーロに次ぐ第3位にランク付けられる見通しが、英金融筋から聞こえてくる。だが、ちょっと待て。元にSDR通貨の資格はあるのか。
第1に、人民元の正体はドルのコピーである。中国人民銀行はドルの増量に合わせて元を発行している。人民銀行が「管理変動相場制」のもと、人為的にほぼ固定した相場で流入する外貨をことごとく買い上げ、資金供給するドルもどきが、変動相場制であるユーロ、円やポンドと対等の国際準備・決済用通貨であるはずがない。第2に、中国は上海などへの金融市場への外からの資本流入を厳しく規制している。そんな通貨が国際通貨に認定されるなら、他の国だって自由変動相場をやめて管理相場に変え、金融市場を規制すればいい。元がSDR通貨になるようだと、これまでの国際通貨・金融制度とはいったい何だったのかということになり、国際金融秩序が根底から揺らぐだろう。日本は、米国やIMFの要求に従って金融自由化して投機筋に翻弄され、90年代前半に資産バブルは崩壊。崩壊後は超円高になろうと外為市場介入を最小限に抑え、米英市場に国内貯蓄を提供、デフレを招いた。元のSDR通貨化を座して見守るわけにはいかない。
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