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2015-03-01 00:00
(連載2)安倍首相の中東歴訪を「西欧対イスラム」で語るな
河村 洋
外交評論家
安倍首相のイスラエル訪問を、盲目的な対米追従だと見なして批判する者も多いが、『エコノミー・ウォッチ』誌は2月11日付けの記事で、「彼自身はもっとリアリストの立場から日本自身の国益追求と中東でのプレゼンスを模索している。パレスチナとの関係を維持しながらイスラエルとの関係を深化させることによって、安倍首相はこの地域での日本の影響力強化をはかっている」と記している。多くの日本人が、殺害事件に非常な衝撃を受けたので、事件とイスラエルを短絡的に結び付けてしまい、中にはこの国が諸悪の根源であるかのように語った者さえいた。しかしわれわれは「命のビザ」を発給した杉原千畝の国であって、ホロコーストを行なったアドルフ・ヒトラーの国ではない。杉田和博官房副長官が委員長となる検証委員会が人質事件を検証する際に、そうした根拠薄弱な反ユダヤ主義が払拭されることが望ましい。
また、イスラム過激派の性質も理解するべきである。日本が宥和したとしてもISISは人質を殺害したであろう。過激派は自分達の同胞であるイスラム教徒さえ殺害する。異教徒を殺すのに何の躊躇があるだろうか?日本は「西欧対イスラム」という文明の衝突に巻き込まれるべきではないという間違った理解が広まっている。それは全く誤っている。歴史を通してみると、キリスト教徒とユダヤ教徒だけがイスラム過激派と敵対関係にあったわけではない。彼らはインドで仏教を根絶したうえに、ゴータマ・シッダルタ生誕の聖地を破壊した。タリバンがバーミアンの大仏爆破を思いとどまるよう請願に訪れた日本代表団に対し、侮辱的な対応だったことを忘れてはならない。
また、日本がアメリカ主導の有志連合と距離を置くべきだという議論も、1月半ばには彼らがロシア人を殺害したことからして間違っている。我々が銘記すべき最も重要な点は、過激派の偏向したイデオロギーと狂気性である。歴史的な証拠が示す通り、イスラム過激派はムスリム穏健派や他宗教の信者に非寛容的である。現在では、彼らはスンニ派の中でも最も教条主義的で無辜の民への殺戮さえ正当化するようなサラーフィー主義に傾倒し、過激性と暴力性を強めている。短絡的に「西欧対イスラム」抗争あるいは日米同盟から距離を置くようでは、積極的平和主義などとても覚束ない。われわれは、中東の安全保障をめぐる複雑なやり取りとイスラム過激派の性質を理解せねばならない。
最後に、グローバル社会は、戦闘地域にいるジャーナリストと援助関係者を守るために国際的なプロトコールを作成すべきだと訴えたい。権力からの独立性を重要視している彼らは、政府の指示に従うことに難色を示すかも知れない。しかし彼らの勇敢な職務への献身がテロリストに利用され、それが誘拐と殺害を誘発して世界を恐怖に陥れている。よって各主権国家はジャーナリストや援助関係者に対し、テロとの戦いでどのように危険に巻き込まれないようにするかというガイドラインを示さねばならない。危機の予防はテロリストに拘束された人質の解放よりも重要である。一度捕まった人質をテロリストから解放する手段は、事実上ほとんどないからである。(おわり)
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