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2015-02-28 00:00
(連載1)安倍首相の中東歴訪を「西欧対イスラム」で語るな
河村 洋
外交評論家
現在、イラクからシリアにかけては、ISISと戦いながらイランの影響力拡大も阻止しなければならない。そうした複雑な安全保障情勢からすれば、日本の巨額援助によって、この地域におけるイランの影響力を弱体化させることは大いに望まれることであろう。それ故に安倍晋三首相の中東歴訪は、最も望ましい時期をとらえたものである。確かに、後藤健二氏と湯川遥菜氏の斬首は恐るべきもので、両人には哀悼の意を述べたい。しかしこの事件をもって安倍首相を非難している者は、感情的にただ首相への反論のために事件を利用しているだけのような印象を受ける。問題は安倍氏が好きか嫌いかではない。日本が中東の安定に寄与するための全体像を考えてゆく必要がある。
アメリカもヨーロッパも長年にわたってこの地域のテロ掃討に関わっている中で、ISISやシーア派ジハード主義者の温床となっている社会経済的不安定を抑制するために従来以上の影響力を行使できるのは、主要民主主義国では日本を置いて他にない。安倍首相はエジプト、ヨルダン、イスラエル、そしてパレスチナ自治政府を訪問したが、4者いずれも体制、国家承認、民族、宗教などの違いを乗り越えて日本の首相と会談するためにわざわざ外交日程を調整した。安倍氏に対する好き嫌いは神でさえどうにもできない。しかし、この機を捉えて安倍首相の外訪を非難する者のほとんどは、中東へのビジョンもなく「日本がアメリカ主導の有志連合から距離を置くべきだ」と主張しているが、それは古い消極的平和主義そのものであり、今世紀においてはとてつもない孤立主義であり時代遅れな考え方である。
さらに、私は日本のオピニオン・リーダー達の間に広まっている反ユダヤ主義に怒りの意を表したい。彼らは日本人人質が殺害された際に「安倍首相があまりにも短慮にイスラエルを訪問したためにアラブの怒りに触れた」と主張した。それは全くの間違いである。パレスチナ自治政府は、安倍首相がイスラエルとともに自分達を訪問することを歓迎した。さらに重要なことに、イスラエルはイランの核兵器とシーア派代理勢力の脅威に対抗するうえで湾岸アラブ諸国にとって事実上の同盟国になっている。
こうした観点からすれば、日本では一般市民から知識人にいたるまで、多くの者がどうしていとも簡単に反イスラエルの視点を持つようになったのだろうか。日本とイスラエルが世界の安全保障で価値観と国益を共有していることからすれば疑問を抱かざるを得ない。何かあると短絡的に「アラブ対ユダヤ」あるいは「西欧対イスラム」による文明の衝突だという見方がされやすいが、1月21日に行なわれたベンヤミン・ネタニヤフ首相と安倍晋三首相の共同記者会見では、反アラブあるいは反イスラム的な文言は一切なかった。ネタニヤフ首相は、イランと北朝鮮への核拡散、そしてそこからテロリストへの核の漏洩が世界に与える恐怖を強調した。他方で安倍首相はテロ、二国間関係とともに、日本がイスラエルとパレスチナの和平交渉を双方の友人として支援してゆくと語った。(つづく)
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